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猫が空き地や駐車場で集まっている姿を、誰が名付けたのか「猫の集会」と呼びます。獣医学の教科書には「約4mの距離を保ち、ゆるやかな円を描いて座る」と記されており、まさにそのような不穏な空気を漂う猫の集会に出くわした事がある人も少なくないでしょう。今回は、そんな猫の集会について解説します。

なぜ猫は集会を開くのか?

猫の集会をみると「なぜ集まっているの?」「何をしているの?」と疑問が湧いてきます。日頃つるむことがない猫達が空き地に集まっている姿からは異様な雰囲気が発せられています。

仮説1:地域猫同士の顔合わせ

猫は非常にテリトリーに敏感な生き物です。特に都心部に住んでいる猫はスペースが狭く、テリトリーが他の猫と被ってしまうこともあるでしょう。また人間と共生している都会猫の食料は、残飯や人間からもらうエサです。そのため、食事をしに行くのに他の猫のテリトリーを超えなくてはいけないこともあります。

猫同士もそれについては仕方ない事だと理解しつつも、定期的に猫の集会を開き新参猫がテリトリーを侵害してないか確認しているというのが、猫の集会についてのひとつの説です。

猫は非社会的な動物であり、お互いが協力する事はないと信じられてきました。協力するのは血縁関係にある猫同士に限ると。しかし最近では、特に都心部の猫においては「共通する利益があれば、血縁関係がない猫間でも協力行為をする」という考え方も猫の行動学者の間で受け入れられるようになってきました。

仮説2:猫の街コン

猫の集会中に交尾をする姿を目撃したという情報もあります。猫も街コンを駆使してパートナーを探しているのではないかという説です。しかしこの説は繁殖シーズン以外にも猫の集会が開催されているとういう事実から簡単に否定されてしまいます。

仮説3:政治的な話合いをしている

仮説1から一歩進み、いわゆるボス猫を決めようとする会議が行われているのではないかという説です。犬や猿では1頭ごとに明確な順位が決められており、どの犬が何番目に偉いのかまで決めます。これを直線的順位制度と呼びます。またネズミは集団の中で1匹だけリーダーを選び、そのネズミ以外は平等な社会を作ります。これを独裁制度と呼びます。

しかし猫はこういった制度を採用していません。支配的な偉そうな雄猫が現れる事もありますが、ボス猿ほどの特権が与えられることはありません。したがって猫が集会で政治的な話し合いをしている説も信憑性が高いとはいえないでしょう。

やはり、「顔合わせをする目的で猫の集会が開催されている」とする仮設1が最も有力な仮説といえるでしょう。

猫の集会の参加条件

猫の集会にも参加条件があります。ひとつは当然ですが猫であることです。残念ながら、人間が参加しようとするとお開きになってしまうことも。

ただ、猫であれば、参加する権利は地元の猫みんなにあるようです。喧嘩が強い雄や年配猫だけでなく、雌猫や若い雄、また雌猫に連れられてきた子猫が参加していることもあります。またノラネコだけでなく人間に飼われている外出自由な外猫も参加可能です。自分の猫が集会に参加している姿を発見すると、子供の授業参観を見ているような気持ちになるでしょう。

猫の集会の開催時間

猫の集会に遭遇する時間は夕方から夜にかけてが圧倒的に多いでしょう。猫は夜行性といわれていますが、実際には夕方の薄暗い時期が最も活動的です。日中は寝ている時間は様々ですが、夕方には一度むくりとおきます。室内で飼われている猫は人間に合わせたライフサイクルになり夜は飼い主と一緒に寝る猫もいます。多くの猫が集まれるように夕方になったのではないでしょうか。

猫の集会は依然として不明な点がおおいです。なぜ都心部に住む猫だけがこのような集会をするのか、真の目的は何なのか。一度猫に扮して集会に潜入してみたいものです。

■著者プロフィール
山本宗伸
職業は獣医師。猫の病院「Syu Syu CAT Clinic」で副院長として診療にあたっています。医学的な部分はもちろん、それ以外の猫に関する疑問にもわかりやすくお答えします。猫にまつわる身近な謎を掘り下げる猫ブログ「nekopedia」も時々更新。