ルネサス エレクトロニクスは8月28日、ドライバの見落とし防止により道路や駐車場における事故の減少や自動運転の実現に向けた製品として、自動車の周辺環境の画像認識機能を組み込んだSoC「R-Car V2H」を発表した。

同製品は、同社の車載情報機器向けSoC「R-Carファミリ」で培った技術をもとに開発されたADAS向けの第1弾製品で、TSMCの28nmプロセスを活用してADASに求められる機能を1チップに集積しつつ、低消費電力も実現したという。具体的には、CPUコアとして「ARM Cortex-A15 Dual Core(動作周波数1.0GHz)」を搭載しているほか、高解像度カメラ6チャネルをそれぞれ独立して搭載している視点変換専用コア「IMR」、CPUと連携し画像認識を行うのに最適化した独自構造の画像認識コア「IMP-X4」、Imagination Technologies3Dグラフィックスコア「SGX531」などを搭載している。また、搭載コアの電力遮断機能、DDR3-SDRAM電源のバックアップ機能なども搭載することで低消費電力も実現したという。

また、IMP-X4は、最適化された専用プロセッサと新開発のプログラマブルプロセッサを合計6つ搭載することで、従来コア「SH7766」と比べ約8倍、「R-Car H1」と比べても約4倍の画像認識処理能力を実現しており、システムとして要求される複数のカメラ処理に応じて構成を柔軟に変更することが可能となっている。

さらに、同社が提供する独自の画像認識ライブラリは従来のR-Car H1やSH7766に搭載されているIMPシリーズと上位互換を有しているほかOpenCVにも対応しており、画像コアの性能を引き出すためのチューニングをすることなく、安定した性能を常時発揮でき、ソフトウェア変更時のスムーズな対応も可能だという。

IMPコアのこれまでの進化。今回のX4では従来からの延長線上にある演算コア4つとShaderコア2つを搭載。演算コアは並列でも直列でも用途に応じて自由に接続を変更することが可能だという。また、そのサポートしている画像認識ライブラリの関数もOpenCVへの対応などもあり400と、前世代比で100ほど増加している

さらに帯域保証や複数カメラの同期などが可能な「Ethernet AVB」のIPも搭載しており、次世代の車載カメラの開発も可能だという。

次世代車載カメラの実現に向けたデモ。左の写真は、赤いクルマの方が従来製品「SH7766」(VGA+アナログ接続)で、クルマに取り付けられた4つのカメラから得られた640×480ピクセルの映像をNTSC方式で伝送・表示している。一方の青いクルマは「R-Car V2H」が搭載されており、同じく4つのカメラから得られた1280×720ピクセルの映像をLVDSで伝送・表示している。右の写真はIMRとIMX-X4を組み合わせたもののデモ

このほか、車載用途としての安全性確保に向け、メモリの一部にECCを搭載しているほか、ハードウェアCRCも搭載しているため、データ転送のend-to-end保護を容易にしたとする。

なお、同製品は2014年9月よりサンプル出荷(サンプル価格は5000円を予定)が予定されているが、実際は開発向けボードやリアルタイムOS(RTOS)、ミドルウェアなどと組み合わされたソリューションとして提供される。ソフトウェア関連の開発はGreen Hills Softwareが担当しており、ユーザーは同社のRTOS「INTEGRITY」と同評開発ボードを活用してADASプラットフォームの開発を行うことが可能となっている。

デモで用いられたクルマの中身。青いヒートシンクの下に「R-Car V2H」がある