東京工業大学(東工大)は8月22日、3つの新しい鉄カルコゲナイド系超伝導体を発見したと発表した。

同成果は、同大大学院 フロンティア研究機構の細野秀雄教授、郭建剛博士研究員、雷和暢博士研究員らによるもの。詳細は、「Nature Communicationss」のオンライン版に掲載される予定。

今回、液体アンモニアを溶媒とする低温合成法(アンモノサーマル法)により、鉄系超伝導体の1つである鉄セレン化合物(FeSe:Tc=8K、Kは絶対温度)にナトリウム(Na)とアンモニア(NH3)を層間挿入してTc=37Kから45Kの新しい超伝導体を発見し、その組成、構造を決定した。また、銅酸化物系超伝導体で見られた層間距離とTcとの関係が、今回発見した物質系には見られないことを突き止めた。これは新たな超伝導物質探索指針につながる知見と言えるとしている。

FeSe系は特殊な薄膜系において100Kを超えるTcが報告されるなど、注目を集めている素材であり、バルク材料(かたまり)でも高いTcが得られることが期待される。また、この物質系は通常の高温焼成法で作ることができず、今回用いたアンモノサーマル法は超伝導体合成法としても有効な手段になっていくと考えられるとコメントしている。

今回の研究では、液体アンモニア中に溶解する金属ナトリウムや鉄カルコゲナイドの割合を変えることで、Tcの異なる3つの超伝導物質(2つは新物質)を合成し、その化学組成と結晶構造を決定した。図はFeSeへのNa-NH3インターカレーションによる層間の状態で、上から、何も入っていない状態、Naのみが入った状態(Phase I)、Naと少量のNH3が入った状態(Phase II)、Naと多量のNH3が入った状態(Phase III)