東北大学は8月26日、蓄電性能の高性能化に重要な役割を果たす硫黄正極と金属リチウム負極を併用した全固体リチウム-硫黄電池を開発したと発表した。

同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構の宇根本篤講師、折茂慎一教授らによるもの。同大 金属材料研究所、および三菱ガス化学と共同で行われた。詳細は、米国物理学会誌「Applied Physics Letters」のオンライン版に掲載された。

電池の蓄電性能は、使用する電極材料の組み合わせで決まる。硫黄正極と金属リチウム負極はそれぞれ、従来の電池に使用される電極と比較して10倍以上の理論容量を有するため、蓄電性能の大幅な向上を達成できる可能性がある。しかし、有機電解液を利用する既存の電池に硫黄正極を適用した場合、放電に伴って硫黄正極が有機電解液へ溶出し、放電と充電のサイクルを繰り返すことにより、蓄電性能は著しく劣化してしまう。

この課題に対し、有機電解液に替わる固体電解質の研究が進められているが、電池への実装が可能な固体電解質はごく一部に限られていた。研究グループではこれまで、錯体水素化物の電池用固体電解質としての高い機能性に着目し、錯体水素化物をベースとした新規固体電解質の開発を進めてきた。このうち、錯体水素化物LiBH4は、120℃において2×10-3Scm-1といった高いリチウムイオン伝導率を示すという。

今回、この錯体水素化物LiBH4の電池への実装に成功した。開発した全固体リチウム-硫黄電池は、少なくとも45回の繰り返し放充電においても顕著な劣化が起きることなく、硫黄正極重量あたりのエネルギー密度が1410Whkg-1以上と、従来の電池に使用されている正極材料と比較すると2~3倍以上の高い値で安定に動作することを確認した。

研究グループでは、蓄電池の小型化・軽量化を達成するための高エネルギー密度全固体電池構成の指針を示した重要な成果であるとコメントしている。

全固体リチウム-硫黄電池。電池構成を見やすくするため、金属リチウム負極の一部を意図的にはく離させてある