北海道大学(北大)は8月21日、力学刺激によって超高速で色が変わるゲルを開発したと発表した。

同成果は、同大大学院 先端生命科学研究院の龔剣萍教授らによるもの。詳細は、「Nature Communications」に掲載された。

ゲルとは、ゼリーやこんにゃくのような、内部にたくさんの水を含んだ柔らかい材料である。開発したゲルは、変形の大きさに応じて赤から青までのフルカラーレンジ発色が可能で、1msという極めて速い応答速度、および0.01mmの空間分解能などといった特徴を有しており、バックライト不要の新方式のカラーディスプレイ、および水中でも使える高速応答圧力センサなどとしての利用が考えられるという。

具体的に、同ゲルは色素が一切含まれておらず、代わりに細胞膜のような脂質二分子膜が100nm程度の間隔で規則的にゲルの中に積層している。この周期的な膜構造が反射板として機能し、特定の波長の光だけが強く反射されるため、膜の周期に対応した色が生じる。これは、玉虫や熱帯魚の表面に色が付いて見えるのと同じ原理で構造色と呼ばれる。ゲルは非常に柔らかい材料なので、変形させると膜の周期が変わりゲルの色も変わる。同様の仕組みで色が変わるゲルは従来もあったが、応答速度が遅く、ディスプレイなど動画を表示する用途には不向きだった。これに対し、今回の開発品は、ゲル中の脂質二分子膜を細かく分割することにより、ハイエンド液晶ディスプレイと同程度の超高速応答を実現したとしている。

構造色ゲルからなるカラーディスプレイの模式図

表示された(左)LSWの文字、および(右)絵柄