群馬大学は8月19日、寄生虫感染によってアトピー性皮膚炎の症状が良くなることを証明し、そのメカニズムを解明したと発表した。

この成果は群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学の石川治 教授、同 天野博雄 講師、同 岸史子 大学院生、同 国際寄生虫病学の鈴江一友 講師らの共同研究によるもので、国際雑誌「Allergy」に掲載された。

アトピー性皮膚炎の原因として、皮膚のバリア機能異常やストレスの関与などさまざまな原因が推測されているが、不明な点が多い。一方、アトピー性皮膚炎の発症は先進国で多く、発展途上国で少ないことがわかっており、この違いについては寄生虫感染がその原因の1つと考えられている。

今回の研究では、湿疹を発症するマウスに寄生虫(マラリア)を感染させ、経過を観察したところ、マラリアの感染症状が進むにつれ、アトピー性皮膚炎の症状が改善されたことが確認された。

さらに、湿疹のある皮膚と湿疹が良くなった皮膚を比較したところ、湿疹が良くなった皮膚ではリンパ球の一種であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)が増加していることが判明。次に、NK細胞が増加しないような薬剤を投与した別のマウスにマラリアを感染させてもアトピー症状は改善されず、湿疹のあるさらに別のマウスにマラリア感染で増加したNK細胞を静脈から移入したところアトピー症状が改善した。これらの結果により、アトピー性皮膚炎の皮膚病変の改善にはマラリア感染した別のマウスから採取したNK細胞が関与していると結論付けられた。

同研究グループは今回の成果について、「アトピー性皮膚炎の病態解明と新たな治療法に繋がる可能性があり、将来的にアトピー性皮膚炎治療における医薬品の開発を含めた臨床応用に貢献できることが期待される」とコメントしている。

今後はマラリア感染によりナチュラルキラー細胞が増加する原因を解明することで、感染以外の方法でもナチュラルキラー細胞を増やすことができるかを探求していくという。