東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は8月14日、同機構が参加している宇宙地図作製プロジェクト「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」において、新たな観測プロジェクト「MaNGA (Mapping Nearby Galaxies at Apache Point Observatory; アパッチポイント天文台近傍銀河地図作成)」がスタートしたと発表した。

SDSSは天体の位置と明るさを測定して距離を決定することで、詳細な宇宙の地図を作ることを目的として、1998年にスタートした観測プロジェクト。観測データは一般に公開されており、研究だけでなく、教育目的にも利用されている。

今回スタートしたMaNGAは、新たに開発した結束光ファイバーを利用してひとつの銀河の中の多くの点を同時に分光観測し、銀河の中の星とガスの分布図を作成することで、銀河の成長の仕組みを解明しようとする試み。従来はひとつの銀河から1点の分光観測結果を得られるだけだったが、新しい装置では最大127点を同時に観測できる。

同プロジェクトを率いる Kavli IPMUのケビン・バンディ特任教授は、「MaNGAでは、SDSSでこれまでできなかった、様々な周辺環境に存在する全てのタイプの銀河の成長の歴史をしらべることができる」としている。

なお、MaNGAのほかにも、天の川銀河全体の星の運動を詳細に観測するAPOGEE-2プロジェクトと、宇宙誕生30億年後までさかのぼって膨張の様子を詳細に測定し、現代物理学でいまだ判明していない暗黒エネルギーの正体に迫るeBossプロジェクトも始動し、宇宙のさまざまな謎の解明につながることが期待される。

図中左上から右下にかけてスローン財団望遠鏡、結束光ファイバーの先端部分、受光面拡大図。右下にはひとつの銀河の分光観測の際、各ファイバーが測定する銀河内の場所が示されている。図に現れている銀河は今回の新たな観測で最初に測定されたうちのひとつ。右上のスペクトル図は銀河の(1)中心部と(2)周辺部の測定データが大きく違うことを示している。(C)David Law, SDSS collaboration, and Dana Berry / SkyWorks Digital, Inc. Hubble Space Telescope image credit: NASA, ESA, the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration, and A. Evans (University of Virginia, Charlottesville/NRAO/Stony Brook University)