加齢黄斑変性について解説する東京女子医科大学眼科学教室の飯田知弘主任教授

バイエル薬品は8月8日、都内にて目に関するメディアブリーフィングを開催。東京女子医科大学眼科学教室の飯田知弘主任教授が「それってホントに老眼? 50代以上に増えている加齢黄斑変性とは?」と題した講演を行い、国内にも患者が多い同症状について解説した。

視力障害の一つである加齢黄斑変性とは、年齢を重ねるとともに網膜の中心部である「黄斑」に障害が生じ、目が見えにくくなる病気。食事などを含めた生活の欧米化で、日本国内でも患者が増えてきており、既に70万人以上の患者がいると推測されている。

加齢黄斑変性には「萎縮型加齢黄斑変性」(dry AMD)と「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」(wet AMD)の2種類がある。飯田主任教授によると、日本人の加齢黄斑変性の約9割はwet AMDだという。

「萎縮型加齢黄斑変性」(dry AMD)の特徴

「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」(wet AMD)の特徴

このwet AMDを発症すると、視界の中心部が暗点となり見えなくなったり、直線がゆがんで見えたりしてしまう。

加齢黄斑変性になると、このような視界になってしまう

症状が急速に進行し、放置しておくと失明の恐れもあるwet AMDだが、適切な治療を続けることで、症状は劇的に改善すると飯田主任教授は説明する。

「以前は視力が落ちていくだけでしたが、治療をすることによって視力低下を抑えて(視力を)改善することができるようになる。そういう時代になりました」。「抗VEGF薬」と呼ばれる薬を用いて継続的な治療を続けることで、視力の改善も可能になったという。

ただ、加齢黄斑変性を加齢による視力低下と思い込み、眼科を受診しない人も多いことに飯田主任教授は懸念を抱いている。

バイエル薬品が7月に全国の50~70代の男女1,000名を対象に実施した「ライフスタイルと目の健康に関する意識調査」によると、以前より目が見えにくくなったと感じている人(n=841)で、実際に眼科を受診した人は24.1%にとどまること判明。さらに、その841人のうちで、目が見えにくくなったと感じているものの、特別な対策をしてこなかった人(n=240)の理由として、「年齢のせい、老眼のせいと思った」を挙げる人が約8割もいたという。

視力低下の対策としては、目薬などを使用する人が最多となっている

年齢のせいと思い込み受診をしないでいると、それだけ加齢黄斑変性の早期発見につながりにくくなる

加齢黄斑変性による視力の低下は、日常生活において「人の顔が識別できない」「値札が見えない」など、さまざまな障害をもたらす。「他の疾患に比べても、QOL(生活の質)を非常に低下させる」(飯田主任教授)病気なのだ。

加齢黄斑変性かどうかを判断する目安の一つとなる「アムスラーチャート」

だからこそ、飯田主任教授は「通常の保険診療で眼科検診などは受けられます。目の健康を維持し、これからの人生もやりたいことにチャレンジしましょう」と、定期的に目をチェックすることで、加齢黄斑変性の早期発見につなげることが重要だとまとめた。