魚はいつ眠るのだろうか、眠るとしたらどんな体勢なのか、といった魚の睡眠に関する素朴な疑問を、800種1万1,000を超える川や海の生き物を飼育展示する水族館「鴨川シーワールド」魚類展示課課長の大澤彰久さんに聞いてみた。

「鴨川シーワールド」のメインゲート

魚はいつ眠るのだろうか?

魚は、人と同じような眠りにつくことはないが、あまり動かずに体を休めている時間が睡眠の代わりになっているとのこと。日没から朝にかけての夜間に体を休める種類が多く、昼間の明るい時間に行動が活発になるのは他の生物と同じだ。ただし、昼間は眠っていて夜に活動する夜行性の動物や昆虫がいるように、魚にも夜行性の種類がいる。例えば、アナゴやタチウオなどが夜行性で、アナゴは夜になると巣穴から出て泳ぎ回り、タチウオは深海から浅瀬に上がってくるという。

ゆったりと泳ぎながら休むマサバ

では、体を休める時はどんな体勢なのか。これは種類によってまちまちで、潮の流れの緩い場所や岩陰などに移動して体を休めていたり、マグロやマサバのように、休んでいる間は泳ぐ速度がゆっくりになるだけで、1日中泳ぎ続ける魚もいる。

また、砂地に生息するクサフグやシロギスは砂に潜って休んでおり、クサフグの場合は目だけを砂の外に出して周囲を警戒しているそうだ。同じく砂に潜るベラの仲間には、人間のように体を横にして潜る種類がいたり、チンアナゴは縦方向に掘った巣穴に潜るため、休んでいる体勢は頭が上で尾が下となる。

砂に潜るクサフグ

そのほかにも、潮流に流されないように海草を咥えて休むアミメハギ、休む際は体を粘膜で覆って保護するブダイ類、昼間に活動している時と夜に休んでいる時では体色や模様が異なるクマザサハナムロやチョウチョウウオなど、様々な習性の魚がいる。なお、魚の目には瞼がないため、休んでいるときも目は開いたままだ。例外として、マンボウには眼瞼(がんけん)と呼ばれる、サメには瞬膜と呼ばれる、瞼に似た器官を持っているが、目を保護するためのものであり、目を休めるために閉じることはないとのこと。

クマザサハナムロは、昼(左)と夜(右)で色が異なる

休む時は砂に潜るシロギス

海草を咥えて休むアミメハギ

休む時は粘膜で体を覆うアオブダイ

眼瞼(がんけん)を持つマンボウ

鴨川シーワールドで夜の魚を確認してみよう

今回の取材に応じてくれた鴨川シーワールドでは、7月24日から8月30日の期間に、普段見ることのできない夜の水族館を係員が説明しながら案内してくれる「ナイトアドベンチャー」を開催している。夜の魚を見るにはうってつけだ。

今回の話題でもある、"暗くなると活発に動き出す魚たち"をはじめ、"水面に浮いて眠るイルカ・シャチ"や"立ったまま眠るペンギン"など、魚や海の動物たちの貴重な夜の姿を観察できる絶好の機会だ。また、普段は見ることのできない水族館の裏側を一般公開する唯一の機会でもあり、夜の水族館でどんなことが行われているのかを知ることができる。

「ナイトアドベンチャー」の様子

「ナイトアドベンチャー」は、鴨川シーワールド正面ゲートに19:45集合し、20:00に出発。見学時間は約1時間。参加料金は、大人(高校生以上)が850円、小人(4才~中学生)が650円、3歳以下は無料となる。参加当日の午後6時までに電話申込みが必要で1日100名限定だ。申し込み方法などは鴨川シーワールドのWebサイトで確認して欲しい。

水面に浮いて眠るシャチ

立ったまま眠るペンギン