NTTと科学技術振興機構(JST)は7月21日、核磁気共鳴(NMR)を用い、半導体ヘテロ構造において、低温かつ強磁場で電子が結晶化する様子を観測することに成功したと発表した。

同成果は、NTT 物性科学基礎研究所の村木康二主幹研究員/上席特別研究員、JST 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)「平山核スピンエレクトロニクスプロジェクト」 物理研究・結晶成長グループらによるもの。理論モデルおよび結果の考察は、東北大学大学院 理学研究科の柴田尚和准教授との議論により得られた。詳細は、英国科学誌「Nature Physics」のオンライン版に掲載された。

80年前に理論的に予言されたウィグナー結晶と呼ばれる電子の結晶状態については、これまで電磁波の共鳴吸収など間接的な情報しか得られていなかった。今回の観測では、電子が結晶のように整列することで、電子スピンが核スピンに及ぼす有効磁場が空間的に変化することを利用し、高純度の半導体ヘテロ構造と高感度の抵抗検出NMR法を用いて、そのミクロな構造が初めて明らかになったという。

この成果は、NMRが半導体中の電子のスピンだけでなく、電荷や軌道の状態を調べるのに有力な手法であることを示しており、今後、ウィグナー結晶以外のさまざまな電子状態の解明や、新たな物性の開拓につながるものと期待される。

また、不純物によって生じる電子分布の変化をナノメートルスケールで調べるなど、電子デバイスをナノレベルで評価する手法として有用な技術になることが考えられるとコメントしている。

NMRによる局所電子密度測定の原理