東北大学は7月14日、小惑星ベスタ由来と考えられている隕石から、SiO2が高圧で安定した鉱物「コーサイト」および「スティショバイト」を発見したと発表した。

同成果は、広島大学大学院理学研究科の宮原正明 准教授、東北大学大学院理学研究科の大谷栄治 教授、同研究科の小澤信 助教、情報・システム研究機構 国立極地研究所の山口亮 助教らによるもの。詳細は7月15日付の「PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences U.S.A.:米国科学アカデミー紀要)」に掲載された。

ベスタは火星と木星の間にある小惑星帯内を公転する約460km~580kmの比較的大きな小天体。2011年~2012年にかけてNASAの探査機「ドーン」が接近し、観測を行った結果、その表面にはさまざまなクレーターが多数存在していることが判明した。

天体同士の衝突の際、衝撃波により高圧状態となり、天体を構成する物質は、より高密度な鉱物(高圧相)へと変化することが知られている。しかし、ベスタでは、こうしたクレーターが無数に発見されていながら、ベスタ由来の隕石では高圧相が発見されていなかったという。

そこで今回、研究グループではベスタ表層部由来とされるユークライト隕石の1つ「Bereba隕石」の解析を実施。その結果、強い衝撃変成に伴う高圧に加え、高温となり岩石の一部が溶けた衝撃溶融脈を複数発見したほか、含有物であるSiO2を調べたところ、衝撃溶融脈の内部とその近辺でSiO2がその高密度相であるコーサイトとスティショバイトに変化していることを発見したとする。

コーサイトとスティショバイトを生成するのに必要な圧力条件から、同隕石は8~13万気圧に相当する圧力状態を経験しているが示され、過去の放射線年代測定と合わせた結果、約41億年前に生成されたことが判明した。

これまでのさまざまな予測では、約10億年前にベスタに別の天体が衝突し、その際に弾き飛ばされた破片が地球に飛来したと考えられてきた。しかし、今回の結果では、天体衝突は41億年前であったことから、研究グループでは、今後、その起源と地球への飛来プロセスを再考する必要があるとするほか、当該時期である38億年~41億年前は、月へ多数の天体が集中的に衝突した時期(後期隕石重爆撃期)と考えられていることから、そうした後期隕石重爆撃が太陽系内のさまざまな天体で起きた可能性が示されたとしている。

Bereba隕石から発見されたSiO2の高圧相、コーサイトの電子顕微鏡写真