富士フイルムは7月14日、従来の銀系抗菌剤を使った抗菌コートと比べて、約100倍の抗菌性能を実現する抗菌コート技術「HYDRO AG」を開発したと発表した。

同技術は、銀系抗菌剤(銀イオンを徐々に放出する機能を持ったセラミック微粒子)を分散した、水となじみやすい超親水性の樹脂(バインダ)を塗布する技術で、同社の写真フィルムで培った銀に関する知見および精密塗布技術と、グループ企業である富山化学工業の抗菌性能の評価技術を融合して開発された。

一般的に、銀系抗菌剤を使った抗菌コートでは、抗菌剤に空気中の水分などが作用して銀イオンが溶出される。この銀イオンは、細菌の細胞表面にある酵素と結合し、細菌を不活化する。このため、塗布膜表面の銀イオン濃度を高めることで、細菌の増殖を抑制する性能を向上させることができる。また、従来の銀系抗菌コートには、水となじみにくい非親水バインダが用いられており、塗布膜表面に露出した銀系抗菌剤に水分が作用した場合にのみ銀イオンが溶出され、細菌の増殖を抑制していた。しかし、塗布膜表面にある抗菌剤の銀イオンは、抗菌作用を発揮するのに伴い消費される。また、塗布膜表面に何かが接触することで抗菌剤自体が物理的に脱落し、その抗菌効果は次第に失われてしまう。これに対し、「HYDRO AG」は、水と非常になじみやすい超親水性バインダの中に銀系抗菌剤を分散しているため、塗布膜表面だけでなく、塗布膜内部の抗菌剤にも水分が作用して、塗布膜内部からも銀イオンを供給する。これにより、塗布膜表面の銀イオン濃度が高くなり、従来にない高い抗菌性能を発揮する。また、その効果が長期間持続することが期待できるとしている。

なお、同技術を用いた製品として、医療機関、公共施設、教育機関などで用いられる、タッチパネル搭載機器向けの抗菌液晶保護フィルムの発売を予定している。

(左)非親水膜である従来の抗菌コートと(右)超親水膜である「HYDRO AG」の構造。従来の抗菌シートは塗布膜表面に露出した抗菌剤からのみ銀イオンが溶出される。「HYDRO AG」は塗布膜内部の抗菌剤にも水分が作用するため、内部からも銀イオンが供給される