東京工業大学(東工大)は7月10日、簡便かつ安価な製造法で得られるフレキシブルで割れない透明導電フィルムを開発したと発表した。

同成果は、同大大学院 理工学研究科 有機・高分子物質専攻の松本英俊准教授、戸木田雅利准教授、坂尻浩一特任准教授、東啓介院生らによるもの。詳細は、「Materials Lettes」に掲載された。

透明導電フィルムは、光と電気を通すことのできるフィルム材料であり、ディスプレイや太陽電池などのデバイスで用いられている。現在、利用されている酸化インジウムスズ(ITO)はコストが高く供給量に限界があり、脆弱で曲げ耐性もないため、代替材料が強く求められている。

今回、エレクトロスピニング法によって作製される髪の毛の1/100~1/1000の細さを持つ繊維であるナノファイバをマスクとして、金属蒸着フィルムをエッチング処理することで、超薄型、軽量、フレキシブルかつ割れない透明導電フィルムを作製する方法を確立した。これまでに、ITOと同等となる80%の高い可視光透過率と、表面抵抗率が45Ω/sqの高い導電性を示す高分子フィルムの作製に成功している。同フィルムの表面には、アルミニウムナノファイバからなる導電性ネットワークが形成されており、ナノファイバとフィルムの密着性も良好である。フィルムの光透過率と導電性は、ファイバ径とネットワーク構造の制御によってカスタマイズすることができる。導電材料としてアルミニウムを用いることで、既存のITO代替技術より低コストで透明電極フィルムを作製できることが強みとなっている。また、アルミニウム以外の金属も利用できるという。

今回開発された透明導電フィルムは、ITO代替材料としてデバイスの低コスト化に寄与するだけでなく、将来的にはフレキシブルデバイスを含む小型端末から大型パネルに至るまで各種電子デバイスへの応用が期待できる。具体的には、薄型テレビ、インタラクティブタッチパネル、スマートフォン、タブレット端末、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子、電磁シールド、機能性ガラスなどが有望な用途であるとコメントしている。

導電性ナノファイバを利用したフレキシブルで割れない透明導電フィルム

エレクトロスピニング法を用いた金属蒸着フィルム表面へのナノファイバマスクの作製

導電フィルム表面のアルミニウムナノファイバネットワーク