獣医師が教える猫の熱中症対策

7月に入り暑い日が続いています。暑い日の猫は体を伸ばして熱を逃がしています。最大まで伸びた猫をみると「うちの猫こんなに長かったんだ!」と驚かされたりしますよね。

猫にとっても夏の暑さは嫌なものです。食欲が減ったり、元気がなくなってしまう猫もいます。そこで今回は、猫の熱中症対策について考えていきましょう。

猫も熱中症になるの?

猫も、人間と同じように熱中症になります。猫はもともと砂漠に住んでいた生き物なので、暑さには比較的強いといわれています。しかし、だからといって熱中症にならないわけではありません。特に、完全室内飼いの猫には注意が必要です。外猫は自分で涼しいところに移動できますが、室内の猫は、閉め切った部屋にとじこめられた場合、室内全体の気温が上昇し逃げ場がなくなるからです。猫の熱中症は発見が遅れることが多く、命に関わる危険な疾患です。

どんな猫が熱中症になりやすい?

熱中症になりやすい猫種というものがあります。

・つぶれた鼻が特徴の猫種:鼻腔が狭いと、熱の発散がしづらいためです。猫は肉球や鼻からしか汗をかかないので、主に呼吸で熱を発散しています。ペルシャ、ヒマラヤン、エキゾチックショートヘア等の鼻の穴が小さい猫種が、熱中症になりやすいです。

・体が大きい猫種や肥満猫:体が大きい動物の方が熱を蓄積しやすいからです。メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャットなど。その他の猫種でも肥満猫には注意が必要です。

・高齢猫、幼猫:体温調節能力が弱いからです。

危険なシチュエーション~留守番中~

■密室
留守番中に注意したいのは、猫が密室に閉じ込められることです。猫の熱中症の殆どがこの状態で発生しています。家を出るときに、猫が狭い部屋やトイレに閉じ込められていないか確認して下さい。

また、幼猫時から室内で飼われている猫は、高いところから降りられない猫もいます(逆に上ることはできます)。屋根裏や高い位置の収納なども、猫が入れないように閉めておきましょう。

その他、猫が自分で扉を閉めて閉じ込められないようにも注意しましょう。なお、ドアストッパーは簡単に猫パンチで外れるものでは意味がありませんので、しっかりしたつくりのものを使用してください。

■水分
脱水の状態になると、さほど暑くない環境でも熱中症になりやすくなります。水飲み場は一カ所だけでなく、複数箇所に設置しましょう。水の入った容器をひっくり返すくせがある猫は特に注意が必要です。

室内での熱中症対策

窓を閉め切ると風通しが悪くなり、日中は想像以上に室温が上がります。防犯上の理由から、留守番中は窓を開けて換気できないという場合は冷房を入れましょう。28℃前後が、猫にとって最も過ごし易い温度といわれていますので、冷房の温度設定は28~29℃で十分です。

また、猫用のクールマットなども用意すると快適です。しかし、これらのグッズ単体では十分な熱中症対策とはいえません。上記の注意事項のプラスアルファのグッズとして使いましょう。

危険なシチュエーション~移動中~

■車移動
人間の幼児の場合でも問題になっていますが、車中に猫を残して車外に出る行為は非常に危険です。お金をおろそうと車を出たら、思いのほかATMが混んでいるなど、短時間の予定に時間がかかることもあります。

また、幼児の車内放置事故は、夏の曇りの日やそこまで暑くない日に多く起りやすいといわれています。「曇りだから大丈夫」「このぐらいの温度なら大丈夫という」という考え方は危険です。猫の場合も同じで、決して車中に猫を残して外には出ないようにしましょう。

■キャリーケースでの移動
キャリーケースの中に猫を入れると、猫が興奮して暑くなりやすいです。ケースの中が狭いと熱がこもるので、猫の体よりも一回り大きいキャリーケースを使うか、保冷剤(凍らせたペットボトルをタオルでまいたものなどでもOK)を一緒に入れると良いです。

また、カートタイプのキャリー(車輪がついているもの)は地面が近く、アスファルトの熱が伝わるので温度が高くなりやすいです。夏場の使用には注意しましょう。

その他、長時間の移動の場合は、猫が脱水状態になりやすいということも覚えておく必要があります。移動中でも、口元に水をつけて舐めさせることで水分補給することができます。

熱中症のサイン

猫の場合、症状だけで熱中症だと診断する事はできません。これらのサインが見られたら、まずはかかりつけの動物病院に相談して下さい。

■軽度
・触ると熱い気がする
・涼しい場所を探してウロウロする
・過剰にグルーミングをして熱を逃がそうとする
・ぐったりして反応が遅い

■重度
・触ると明らかに熱い
・ぐったりして動かない
・犬のようなパンティング(舌をだしてハァハァする呼吸)をする
・肉球が汗ばんでいる
・心拍が早い、呼吸が速い
・よだれがでている
・嘔吐をする
・よろける、歩き方がおかしい

体温測定

もし自宅で体温が測れるのであれば、熱中症の診断の助けになります。猫の平熱は人間よりも高く、37.5~39.2℃(99.5~102.5°F)です。猫によって平熱に差があるので、日頃から測っておくことをおすすめします。

この範囲内であっても、平熱が低い猫で、熱中症を疑う症状がでていれば熱中症の可能性があります。測定時に猫が抵抗することで、体温が若干高めにでることはありますが、40℃以上になるのは明らかに異常です。

もしも熱中症が疑われたら

熱中症が疑われたら、まずはすぐに動物病院に連絡して下さい。熱中症から回復できるかどうかは、「発症からどのくらい時間が経過したか」が大きく影響します。獣医師が熱中症の可能性が高いと判断した場合は、動物病院への移動中も冷却するよう指示があるでしょう。

また、意識が低下している場合は、嘔吐物の誤嚥(ごえん)にも注意しなくてはいけません。その他、移動にも細心の注意を払うことが必要です。

猫の熱中症は、対策をすれば防ぐことができる疾患です。猫の場合は、密室に閉じ込められ、帰宅したら猫がぐったりしていたというパターンが多いです。悲しい事故がおこらないよう、夏場は出かける前に猫の居場所をチェックしましょう。

(画像は本文と関係ありません)

■著者プロフィール
山本宗伸
職業は獣医師。猫の病院「Syu Syu CAT Clinic」で副院長として診療にあたっています。医学的な部分はもちろん、それ以外の猫に関する疑問にもわかりやすくお答えします。猫にまつわる身近な謎を掘り下げる猫ブログ「nekopedia」も時々更新。

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