東京工業大学(東工大)は7月4日、カチオン性テレケリクスと多価アニオンとの静電相互作用による自己組織化を利用し、単環状・多環状などの複雑なトポロジー高分子を選択的に合成する手法「ESA-CF法」を用いることで、複雑な構造の多環状高分子の合成に成功したと発表した。

同成果は、同大大学院理工学研究科の鈴木拓也元大学院生、山本拓矢助教、手塚育志教授らによるもの。詳細は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報(Just Accepted Manuscripts)に掲載された。

研究グループはこれまで、多種・多様な単環状・多環状トポロジー高分子を効率的に合成する反応プロセスの開発を進めてきており、独自に分子設計した末端官能性高分子前駆体(テレケリクス)による高分子間静電相互作用を駆動力とする自己組織化と、選択的共有結合変換を統合「ESA-CF法(Electrostatic Self-Assembly and Covalent Fixation)」を確立したことを報告しており、現在は、ESA-CF法と新しい有機合成化学手法(Click=クリック法、Metathesis=メタセシス法など)を組み合わせ、新奇トポロジー高分子を自在に提供するブレークスループロセスの開発を進めている段階にあるという。

今回の研究では、複雑な1次構造のため、これまで誰も合成戦略を描くことのできなかった四環三重縮合トポロジー「K3,3グラフ構造」の高分子の合成に挑戦し、ナノスケールのK3,3グラフ構造高分子とその構造異性体を合成することに成功したほか、α-グラフ構造を含む3種の三環二重縮合トポロジー高分子の構造異性体を得ることに成功したとする。

また、これら得られた構造異性体に対し、流体力学的体積(サイズ)の違いを識別するSEC操作のリサイクルを十数回にわたって繰り返すことで分離・分別に成功したという。

さらに、これらの構造異性体は、各種の構造解析手法によって構造確認・同定され、目的とするK3,3グラフ構造高分子の合成・単離を確認したとする。。

今回の成果について研究グループは、基礎数学(トポロジー幾何学)と高分子化学を融合する新たな基礎研究領域としての「高分子トポロジー化学」体系の構築に向け一歩となると説明している。

K3,3グラフと関連する複雑な多環状縮合構造高分子の「かたち」(青色の「かたち」は、これまでに報告されたもの、また赤色は今回の論文で報告したもの。なお緑色には、六分岐テレケリクスの末端の連結様式を示している)