九州大学(九大)は7月2日、金属容器に充填された水素が壁を透過し、内部が真空になる現象を確認したと発表した。

同成果は、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)/水素材料先端科学研究センターの高田保之教授らによるもの。詳細は、Elsevier社の国際学術誌「International Journal of Hydrogen Energy」のオンライン版に掲載された。

研究グループでは、水素利用機器に使用される金属材料の透過率を簡易的に測定する方法を開発し、ステンレスSUS316L、およびインコネル625をコイル状にした容器を使って、種々の温度条件で透過率の測定したところ、300℃以上の高温で、初期圧力0.7MPa(7気圧)で充填した水素が容器の壁を透過して周囲の大気圧の窒素ガスに拡散し、10~50時間後、容器内部の圧力が最終的に10Pa(1/1万気圧)のほぼ真空にまで減少することを確認した。高温で水素が金属壁を透過する現象は一般的によく知られているが、容器内部の圧力が真空になる現象はこれまでに報告されていない。今回の研究で開発された測定手法を用いて、水素エネルギー機器に使用されるさまざまな金属材料の透過率を求め、データベース化することにより、安全性向上への貢献が期待されるとコメントしている。

水素の透過率を測定する装置。所定の温度に設定した上で、コイル状にした管材料に水素を流し、漏洩する水素をガスクロマトグラフで検知。あるいは水素を充填した上で、バルブを閉め、密閉状態で圧力降下をモニタすることにより透過量を決定する