東大、中空ファイバ中でストロンチウム原子の高精度分光に成功

東京大学は6月17日、中空フォトニック結晶ファイバ(中空ファイバ)中でストロンチウム原子の高精度分光に成功したと発表した。これは、光格子時計をはじめとする量子計測装置の小型化に向けた、新たな基盤技術となる重要な成果であるという。

同成果は、同大大学院 工学系研究科の香取秀俊教授(理化学研究所 主任研究員)らによるもの。詳細は、「Nature Communications」に掲載された。

現在、光格子時計は次世代の"秒の定義"の有力候補として世界中で盛んに研究されているが、実用化のためには、小型化・可搬化が不可欠である。今回の成果では、中空ファイバの中にレーザ冷却されたストロンチウム原子を閉じ込め、高精度な分光に成功した。具体的には、中空ファイバの中で魔法波長と呼ばれる特別な波長のレーザ光を干渉させて作った微小空間である光格子を形成し、原子をファイバの中心に等間隔で並べることで、原子とファイバ壁や、原子同士で起きる相互作用、光格子による原子の周波数シフトなどの外部影響を除去し、原子の自然幅のスペクトルに迫る分光計測を実現した。これは、従来ファイバ中で観測された最も狭いスペクトル線幅をさらに1/1000近く低減する成果である。

分光測定など、量子計測における雑音の低減のためには、観測する原子数の増大が重要である。一方で、原子間の相互作用を防ぐためには光格子を作り、個々の原子を隔離する必要がある。1次元の光格子では、波長の半分の間隔で原子が並ぶため、観測可能な原子数は1次元光格子の全長に比例して増大する。自由空間中では光の回折によって全長が制限されるが、光ファイバ中では任意の長さに延伸可能である。

今回、実証した実験系では、原子間相互作用を低減し、かつ原子の光学的な密度を増大することが可能である。同技術は、光格子時計の小型化に不可欠であり、量子計測の高精度化に広く応用できる。今後、光格子時計が小型化し、持ち運べるようになれば、重力の差による時間の遅れを測って、地下資源を探索するなど、時を測るだけに留まらない広範な応用が期待されるとコメントしている。

光格子の模式図。原子(緑色)が光の定在波で作られた光格子(茶色)の中で捕獲されている。光格子は魔法波長と名づけられた特別なレーザ波長で構成されている。光格子の一区画ごとに原子を入れ、隣の原子との相互作用を排除する



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