慶応大、iPS細胞を用いない短期間かつ効率的な心筋細胞直接作製法を開発

  [2014/06/12]

慶応義塾大学(慶応大)は6月11日、マウスおよびヒトの心臓線維芽細胞からiPS細胞を経ずに短期間で効率的に心筋様細胞を直接作製する方法を開発したほか、心筋直接誘導の仕組みの一部を解明したと発表した。

同成果は、同大医学部循環器内科の家田真樹 特任講師、村岡直人 助教らによるもの。詳細は、欧州科学雑誌「The EMBO Journal」のオンライン速報版にて公開された。

心臓細胞は増殖しないため、再生能力がなく、心筋梗塞などで障害を受けると、線維化しポンプ機能が低下してしまう。その治療法は、心臓移植以外になく、日本ではドナー不足などの問題があり、再生医療の実用化が期待されるようになっている。しかし、iPS細胞などの幹細胞は、分化誘導効率の悪さ、腫瘍形成の可能性、移植細胞の生着率の低さなどの課題があった。

一方、心臓の細胞は、その約30%が心筋細胞、残りの50%以上をポンプ機能を持たない心臓線維芽細胞で構成されており、この心臓線維芽細胞を直接その場で心筋細胞に転換できれば、幹細胞を用いた際の各種課題を解決できる可能性があるという仮説のもと、研究グループは幹細胞を介さず、直接心筋を作製する心臓再生医療の研究をこれまで行ってきた。すでに2012年には、マウス生体内の心筋梗塞線維化巣で心筋様細胞の再生に成功していたほか、2013年にはGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Myocdという5つの遺伝子によるヒト心臓線維芽細胞から心筋様細胞を直接作製できることを報告していた。ただし、作製効率は十分でなく、実際に臨床応用するためにはより効率の高い心筋作製法の開発や、直接誘導を阻害する因子や繊維芽細胞から心筋細胞への運命転換の仕組みが不明であったことから、その解明などが求められていた。

今回、研究グループは、マウス線維芽細胞およびヒト心臓線維芽細胞に、心筋誘導遺伝子とマイクロRNAを同時に導入することで心筋様細胞を短期間で効率的に直接作製できる方法を確立した。また、ヒト心臓線維芽細胞は心臓外科手術でカニュレーションのため取り除かれる心筋組織から培養することで、患者に新たな負担をかけることなく採取することができることも示したという。

さらに、2013年に米国の研究グループが筋特異的マイクロRNA「miR-133」を加えてヒト繊維芽細胞から心筋様細胞を作製したという報告から、miR-133の機能解明を進めたところ、miR-133を加えることで心筋細胞の特徴である自律性拍動の開始が遺伝子導入後30日から10日に短縮されること、ならびに拍動細胞数も約7倍に増加することを確認したほか、心筋誘導因子やmiR-133が上皮間葉移行や線維芽細胞のマスター因子である「Snai1」の発現を抑制して線維芽細胞の特性を消すことで心筋誘導を促進することを発見したとする。

加えて、ヒト心臓繊維芽細胞においても、miR-133を加えることで、心筋様細胞の誘導が約10倍に改善されることを確認したほか、Snai1の抑制と線維芽細胞の特性消失が心筋誘導促進に重要な役割を果たしていることを確認したとする。

なお、研究グループでは、今回の成果であるSnai1という阻害因子の同定や、線維芽細胞の特性を抑えることで心筋誘導を促進するという細胞リプログラミングの仕組みは、他の細胞種作製にも共通する可能性があるとコメント。心臓再生医療の実現を早めることが期待できるようになるとするほか、他領域における細胞リプログラミングの分子機構や再生医療全体にも成果が波及する可能性も期待できるとしている。

心筋誘導因子とmiR-133による心筋様細胞の直接誘導の仕組み。miR-133と心筋誘導因子は線維芽細胞のマスター因子であるSnai1 の発現を抑えることで、線維芽細胞の特性を消して心筋誘導を促進する

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