北海道大学(北大)は5月30日、アルミニウムが近赤外波長域で高効率に光を捕集するナノアンテナとして動作すると発表した。

同成果は、同大 電子科学研究所の三澤弘明教授らによるもの。詳細は、「ACS Photonics」に掲載された。

地上に到達する太陽光エネルギーのうち約46%が赤外光だが、現在の太陽電池や人工光合成においては、赤外光を有効に利用できていない。これまで、研究グループは赤外光を捕捉するナノアンテナとして金ナノ微粒子を用い、波長800nm以上の近赤外光により光電変換可能なシステムを作製し報告してきた。金や銀などの金属ナノ構造では、光と共鳴すると金属表面の自由電子の集団運動が誘起される局在プラズモンという現象が生じる。例えば、ステンドグラスの鮮やかな赤色は、ガラスの中に分散している金のナノ粒子によるものだが、金ナノ微粒子に光が照射されることにより、この局在プラズモンが生じるため、金色ではなく赤色に見える。

一方、アルミニウムは金や銀に比べて導電性が落ちるため、光と共鳴しても自由電子の運動が妨げられ、局在プラズモンが誘起されてもアルミニウムのナノ微粒子は光を捕捉するためのアンテナとしては高い性能を示さないと、これまで考えられていた。しかし、アルミニウムのナノアンテナが実現すれば、安価に製造できるというメリットがある。そこで、近赤外領域におけるアルミニウムナノ構造による局在プラズモンの特性を詳細に調べたところ、極めてユニークな光学性質を示すことが明らかとなり、太陽電池や人工光合成への適用も可能であることを見出したという。

今後、太陽電池や人工光合成のシステムに、より安価なアルミニウムを使ったナノアンテナを搭載し、金や銀などと同様のエネルギー変換が可能になることが期待されるとコメントしている。

アルミニウムナノ構造の設計略図および電子顕微鏡写真(図中赤い点は光電場増強が誘起される場所)