ルネサス エレクトロニクスは6月2日、USB Power Delivery Specification(USB PD仕様)に対応したコントローラLSI「μPD720250」を発表した。7月よりサンプル出荷を開始する。

USBは通信と同時に電力供給も可能なインタフェース規格であり、従来から様々な機器の接続インタフェースとして幅広く使用されている。近年、スマートフォンやタブレットなどの急速な普及と、欧州委員会(EU)が欧州で販売される携帯電話の充電器インタフェースをMicro USBコネクタに標準化したこともあり、USB経由でモバイル機器のバッテリを充電することが一般的になっている。しかし、従来のUSB規格では給電能力が最大でも7.5W(5V/1.5A)であったため、USB給電はモバイル機器の充電や小型周辺機器の駆動などに限られており、給電能力のさらなる向上が求められていた。

同製品は、USBケーブルを介して最大100W(20V/5A)の電力需給を実現するUSB PD仕様に対応した制御コントローラである。採用することで、最適な電源回路との組み合わせによりノートPCへのUSB給電やスマートフォン、タブレットPCなどのバッテリ充電時間を短縮するシステム開発の実現に加え、ノートPCや各種機器に付属するACアダプタの共通化により、システム構築におけるコスト・環境の負荷軽減が可能になる。

具体的には、MBus経由でコントロールが可能であり、タブレットやノートPCなどへの組み込みが容易。また、外部ROMファームウェアの柔軟な対応により、電力供給側および需要側それぞれに最適なシステムを構築できる。今後、ボード、ソフトウェアを含めた各種システムに対応するソリューションキットが提供され、システム開発がサポートされるという。さらに、独自の低消費電力化技術により徹底した待機電力・動作電力の低減を図っており、Energy StarとEuP指令の対応に適している。この他、1.0Vレギュレータを内蔵し、3.3V単一電源電圧で動作可能となっている。加えて、小型パッケージを採用しているため、システム構築の低コスト化・小型化に寄与するとしている。

USB PD仕様は、ノートPCなど消費電力の大きい電子機器にもUSBを介して給電することを目指して2012年に策定された。USB PD仕様では、接続機器は相互に給電能力・需要量をやり取りし、安全性を確保した上で最大100Wの電力供給を制御することもできる。これにより、消費電力の大きい電子機器への給電や、バッテリ充電時間の大幅な短縮が可能になる。また、従来のUSB給電はホスト/ハブ機器から周辺機器への一方向の給電に限られたが、USB PD仕様では従来と逆方向への給電に変えることもできる。例えば、ノートPCからUSB通信で大型モニタにビデオ出力すると同時に、AC電源から電力供給中の大型モニタからバッテリで駆動中のノートPCにUSB給電するといった新たな用途の創出が見込まれるとしている。

ルネサスのUSB Power DeliveryコントローラLSI「μPD720250」