情報通信研究機構(NICT)は5月26日、UWBを活用した高精度の屋内測位システムを開発したと発表した。リアルタイムで数10センチメートル程度の高精度な位置測定ができる。

これにより、スマートフォンやタブレットと組み合わせて用いることで、利用者の位置情報に連動した多様なサービスの実現が可能となる。

UWBを用いた屋内測位システムは、ナノ秒オーダーの非常に短いパルスの電波を用いることで、Wi-Fi(数メートル程度の精度)やIMES(10メートル程度の精度)等の屋内測位システムより一桁以上高い数10センチメートル程度の精度で位置測定することができる。

しかしUWBは測定距離が短いため、測距のための固定機を多数設置しなければならないといった課題があり、コストなどの面から実用化が困難であった。

今回、NICTが開発したUWB(7.25-10.25GHz帯)を利用した高精度の屋内測位システムは、測定距離を増大させる技術を取り入れて30メートルに増大させることで、測距のために必要な固定機を削減させることが可能となった。

また、利用者が携帯しやすいようなUWB移動機として、スマートフォンに連結した形状の端末や作業ポケットに入れられる小型端末を開発した。

小型携帯端末

さらに、この屋内測位システムは、エリア内の移動機の位置情報をリアルタイムで測位できるだけでなく、視覚障がい者が歩行する上で主な障害となる段差、階段の有無や道幅などの状況を考慮したルートを算出できるため、目的地までの距離と方向を音声読上げと音声入力によりナビゲーションする、視覚障がい者の歩行支援などへの活用も期待される。

NICTでは、今回開発した屋内測位システムを利用して、次のような実証実験を行なっている。この実証実験は、ノースポート・モールとセイノー情報サービスの船橋物流センターの協力で実施されている。

  • ショッピングモールでの顧客サービスの向上

  • 顧客位置に連動したショッピング情報の提供やスマートオーダー等に対応

  • 店員の移動端末により店内どこでもクレジット決済できるサービス

  • 物流倉庫での作業効率と安全性の向上

  • 作業員及びフォークリフトの動線の可視化

物流現場におけるUWBの活用方法