理研など、喘息が起きるメカニズムを新たに解明

理化学研究所(理研)と東京理科大学は5月16日、ダニ抗原などのアレルゲンで誘導される喘(ぜん)息が、アレルギーを起こす白血球「好塩基球」から産生される「インターロイキン(IL)-4)」を介した「2型自然リンパ球(NH(ナチュラルヘルパー)細胞)」との共同作業によって起こるという新しいメカニズムを明らかにしたと共同で発表した。

成果は、理研 統合生命医科学研究センター サイトカイン制御研究チームの久保允人チームリーダー(東理大 生命科学研究所 分子病態学研究部門教授兼任)、東理大 総合研究機構 戦略的環境次世代健康科学研究基盤センターの本村泰隆研究員らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間5月16日付けで米科学誌「Immunity」オンライン版に掲載された。

アレルギー反応は、発生メカニズムによって5つのタイプに分類されており、「免疫グロブリンE(IgE)抗体」によって引き起こされるものを「I型アレルギー」と呼び、気管支喘息や花粉症、アレルギー性鼻炎などがその代表例だ。IgE抗体は「肥満細胞(マスト細胞)」や好塩基球が持つ受容体に結合することで、アレルゲン特異的にアレルギー反応を起こす。好塩基球は白血球の中でも、塩基性色素により暗紫色に染まる大型の好塩基性顆粒を持つものを指すが、白血球全体の0.5%以下しか存在しないため、長い間その機能や生物学的特性は謎のままだった。

近年、アレルギーはIgE抗体を介したマスト細胞や免疫細胞の1つであるT細胞による反応系が存在しなくても起きることがわかってきている。このような抗原特異的な反応とは無縁なアレルギーには、好塩基球や免疫システムの最前線で働く新しいタイプのリンパ球「自然リンパ球」が関与している可能性が示され、注目されているところだ。

アレルギーを強く誘導するアレルゲンとして働くことが知られているタンパク質分解酵素「システインプロテアーゼ」は、ダニ抗原やパイナップル由来のなどに含まれるタンパク質分解酵素であり、気道などに過剰に侵入した際、気道上皮を壊すことによって、アレルギーを誘導する「IL-33」を気道内に放出する。そして、放出されたIL-33が直接自然リンパ球の1つNH細胞に働き、喘息を引き起こすという仕組みだ。しかし、喘息の発症に関わる好塩基球の働きなど、詳細なメカニズムはわかっていなかった。

研究チームは、マウス生体内で起こるアレルギー反応における好塩基球の役割を解析するため、好塩基球を持たない細胞特異的欠損マウス「Bas-TRECK」と、好塩基球由来のIL-4だけを欠く遺伝子改変マウスが実験に用いられた。通常、システインプロテアーゼ(ここでは、パイナップル由来の「パパイン」が利用された)を点鼻投与すると、3日以内に肺に炎症の原因となる白血球の1種である「好酸球」が大量に集まり、粘液「ムチン」の産生が誘導されて喘息症状が現れるという具合だ。

しかし、Bas-TRECKマウスにパパインを投与しても喘息症状が現れず、肺への好酸球の集積やムチンの産生も顕著に抑制されたのである。同様の喘息症状の抑制は、好塩基球由来のIL-4だけを欠くマウスにおいても認められた。これらから、好塩基球から産生されるIL-4の重要性が示されたのである。

喘息における肺への好酸球の集積は肺に存在するNH細胞から産生されるケモカイン「CCL11」、ムチンの産生はNH細胞から産生される「IL-5」や「IL-13」などによるものだ(画像1)。そこでまず、好酸球の集積やムチンの産生過程におけるIL-4の役割が調べられた。その結果、好塩基球からIL-4が産生されないと、NH細胞からCCL11やIL-5、IL-13の産生が抑制されると共に、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現が抑制されることが判明したのである(画像2)。

また、Bas-TRECKマウスに野生型マウス由来の好塩基球を移入したところ、喘息症状の抑制が解かれて症状が現れた。一方、同マウスにIL-4を産生できない好塩基球を移入したところ、喘息症状は現れなかった。これらの結果から、NH細胞の活性化には好塩基球から産生されるIL-4が必要であり、システインプロテアーゼで誘導される喘息は、好塩基球から産生されるIL-4を介した好塩基球とNH細胞の共同作業が必要であることが明らかになったのである。

画像1(左):好塩基球による喘息制御の模式図。画像2(右):IL-4とナチュラルヘルパー細胞の関係。パパインで活性化したマウスの肺より採取したNH細胞における炎症に関与する遺伝子の発現パターンが示されたもの。IL-4を産生する好塩基球を持つマウスでは、さまざまな炎症に関与する遺伝子が上昇する(中央:Papain WT)。ところが、好塩基球でIL-4を産生できないマウスでは、これら炎症に関与する遺伝子がパパイン処理をしていない遺伝子パターン(左:Naive WT)と同じ、活性化していないパターン(右:Papain Il43'UTR def)が示された

現代社会で、アレルギーは日常生活に支障をきたすほどの影響があり、生活環境を見直す必要が生じるなど、非常に大きな社会問題を引き起こしているが、T細胞やIgE抗体を必要としないアレルギーや、システインプロテアーゼなどのタンパク質分解酵素がアレルゲンとして喘息を引き起こす能力を持つことなどアレルギーの実態が解明されつつもある。今回の成果により、システインプロテアーゼによって引き起こされる喘息の発症メカニズムに好塩基球やNH細胞など新しい免疫細胞の関与が明らかになった形だ。また、同時にアレルギー反応にもさまざまな側面があることが示された。今後、これら細胞を標的とした新しい視点からのアレルギー治療法の開発や、さまざまなアレルギーの原因や症状に適合した治療法の構築が期待できるとしている。

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