言い間違えやすい「なおざり」と「おざなり」。どちらを使っても意味は通じそうですが、本当にどちらも意味は同じなのでしょうか? それともまったく違う意味の言葉?「なおざり」と「おざなり」の意味の違いについて、ご紹介いたします。

■「なおざり」は、どういう意味?

なおざりは漢字で「等閑」と書きます。平安時代から使われていた古い言葉で、物事をいい加減に扱ったり、本気ではない様子、おろそかな様子をあらわす時に使われます。この言葉は、特に何もしないという意味のある「直(なお)」、もしくは以前のままの状態が続くことをあらわす「猶(なお)」という字に、その場を離れるという意味の「去り(さり)」、もしくは避ける・よけるという意味の「避り(さり)」という言葉がつけられたという説があります。「なおざり」という言葉はそのため、「いい加減にしたまま、放っておく」もしくは「いい加減にしたまま、何もしない」という意味で使われています。

■「おざなり」は、どういう意味?

おざなりはなおざりに比べて、比較的新しい言葉で、江戸時代から使われていたという説が一般的です。おざなりという言葉は「お座」に「なり」という言葉がくっついたもので、その昔、お座敷や宴会の席で芸を披露していた人たちが、客の顔ぶれをみて芸に力を入れたり、手を抜いたりしていたために「それぞれ、お座敷なりに」という意味で「おざなり」が使われるようになったという説があります。おざなりは「その場だけ、取り繕って済ませる」「その場逃れのいい加減な言動」という意味で使われています。

■「なおざり」、「おざなり」どう違う?

「なおざり」と「おざなり」は、物事をいい加減に扱うという意味では同じですが、「なおざり」の場合は、いい加減に扱っておいて「放っておく」もしくは「何もしない」ことをより強調する時に使われます。

一方「おざなり」の場合は、物事をいい加減に扱うという意味では「なおざり」と同じですが、「適当にすませる」「その場だけ間に合わせる」等、いい加減に扱うには扱うが、「それ相応に済ませる」という意味が含まれています。

つまり「なおざり」は「いい加減で何もしない」ことを指す言葉で、「おざなり」は「いい加減に済ませてしまう」ことを指す言葉なのです。

言い間違えやすい「なおざり」と「おざなり」。その意味するところは、それぞれ全く違うようです。「なんだ、そのおざなりな態度は」と言うか、「なおざりな態度は」と言うかで、相手への評価が変わってきます。こちらが指摘するはずが、逆につっこまれてしまう恐れもあるため、ぜひその意味の違いに気を付けて使ってみてくださいね。