劇団「大人計画」の主宰で俳優や演出家などでも活躍中の松尾スズキが、漫画家・いがらしみきお原作の映画『ジヌよさらば ~かむろば村へ~』(2015年春公開)で監督・脚本、主演を俳優の松田龍平が務めることが23日、明らかになった。撮影は5月からスタートする予定となっている。

映画『ジヌよさらば ~かむろば村へ~』の出演者(上段左から松田龍平、松尾スズキ、下段左から松たか子、阿部サダヲ、二階堂ふみ)

原作は、いがらしみきお氏によって2007年から2008年まで漫画雑誌『ビッグコミック』(小学館)で連載された『かむろば村へ』。松尾監督は、これまで『恋の門』(2004年)、『クワイエットルームにようこそ』(2007年)の長編作品で監督・脚本を務め、脚本で携わった『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』(2007年)では、第31回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した。松田とは、『恋の門』以来、10年ぶりのタッグとなる。

主演の松田は、『船を編む』(2013年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など数々の映画賞で主演男優賞を総なめ。その勢いは松尾監督にも伝わっていたようで、「龍平と『あまちゃん』で共演したり最近の仕事を見るに『のってるな!』と思い、10年前のコネの使いどころはここだとねじこんでみました」と振り返った。松田も、「『恋の門』に続いて松尾スズキ監督の作品に出演できることを心よりうれしく思います」と再タッグを喜んでいる。

松田が演じるのは、金アレルギーになったことから職場の銀行を辞め、東北地方の寒村を訪れた主人公。お金を一切使わない生活を目指してやってきたその村には、隠された過去を持つ異常に世話焼きな村長(阿部サダヲ)と美しいその妻(松たか子)、自ら"神様"を名乗り、皆からそう慕われている老人(西田敏行)など、個性豊かな村人たちがいた。お金に背を向けながら村人たちと向き合う内に、主人公の暮らしは思わぬ方向に走りだしていく。

「一銭も金をつかわず生きるという極端なテーマは、過去に発表されたにも関わらず、経済的に混迷する現在にピッタリだと思いました」と語る松尾監督。脇を固めるキャストについても、「阿部は自分が育てた俳優なのに、いつもスケジュールで捕まらず、やっと映像で仕事ができると喜んでいます。松さんは、『東京タワー』に出ていただき、その透明感に魅了されていました。二階堂(ふみ)さんとはドラマの時に知り合い『面白い子だなー』と思っていたらめきめきと頭角を現して来て、今が旬だと狙い撃ちしました。西田さんは昔から尊敬する俳優で、まさか受けてくださるとは、逆におっかなびっくりです」とそれぞれ起用理由を明かした。

一方、原作のいがらしみきお氏は、「私の作品では初めての実写映画が、こんなに豪華なスタッフとキャストで実現されるとは信じられない思いです」と驚きながらも、「原作の『なにも売らない・なにも買わない・ただ生きて行く』というテーマが、敬愛する松尾スズキさんの手によって、どう変化し、化学反応するのかとても楽しみです」と期待は大きい。「きっとこれからの日本の行く末の影と光を示してくれるものになるでしょう」と推測し、「この映画の完成を見るまでは死ねないな、と思いました」とコメントしている。

(C)2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば~かむろば村へ~』製作委員会