東京大学(東大)は4月11日、マウスにおいて、アレルギーや炎症を引き起こす免疫細胞の一種「マスト細胞」が、皮膚や肺、腸管などの組織でそれぞれ異なる特性をもつことを確認し、これらの特性は結合組織を構成している細胞である「線維芽細胞」によって調整されていること、ならびに皮膚では線維芽細胞によってビタミンAの濃度が調節されており、過剰なビタミンAや線維芽細胞によるビタミンAの代謝機能が働かなくなった場合にマスト細胞が異常活性化し、皮膚炎が誘導されることを確認したと発表した。

同成果は、同大医科学研究所の倉島洋介 助教、清野宏 教授と医薬基盤研究所の國澤純 プロジェクトリーダーらによるもの。詳細は米国科学誌「Immunity」オンライン速報版に掲載された。

今回、研究グループはマスト細胞の皮膚などの結合組織や肺や腸管などの粘膜組織などにおけるそれぞれの性質や組織特異性の調節メカニズムの解明に向け、身体のさまざまな組織から単離した線維芽細胞とマスト細胞を試験管内で培養することで、各組織におけるマスト細胞の特性を導き出した。

皮膚のマスト細胞の特性としては「P2X7受容体」の発現が他の組織より少ないことを確認。実際にP2X7受容体を発現するマスト細胞をマウスの皮内に移植したところ、数日でP2X7受容体のレベルが低下することが確認されたという。

マスト細胞の皮膚への移植実験。P2X7受容体を持つマスト細胞をマウスの皮膚に移植するとP2X7受容体のレベルが数日で低下した

この結果から研究グループでは、皮膚の線維芽細胞のもつ「Cyp26b1」と呼ばれるビタミンA(レチノイン酸)を代謝する酵素により発現が調節されていることを突き止め、この作用が働かなくなる状況もしくは過剰なレチノイン酸が皮膚中に存在する状況では、マスト細胞の過度な活性化が導かれ皮膚炎が生じることを確認したとする。また、その一方で、P2X7受容体やマスト細胞を持たないマウスでは、皮膚の炎症が起こらないことも確認したとする。

ビタミンAの過剰による皮膚炎。ビタミンAの過剰により皮膚に炎症が引き起こされる。P2X7受容体やマスト細胞を持たないマウスでは、皮膚の炎症が起こらない

過剰なビタミンAの摂取は、慢性中毒症として嘔吐や下痢とともに皮膚障害といったさまざまな健康障害を引き起こすことが知られているが、研究グループでは、例えば、イヌイットの皮膚障害は、ホッキョクグマの肝臓など高濃度のビタミンAが蓄積されたものを食べる習慣によって引き起こされるという話があるが、これは皮膚中のレチノイン酸の増加によってマスト細胞のP2X7受容体が増強された結果、マスト細胞が活性化してしまい、ヒスタミンやケモカイン、炎症性サイトカイン、脂質メディエーターなどが皮膚中に放出されて慢性的な炎症が導かれることによるものと説明できるとする。

なお研究グループでは今回の成果を踏まえ、これまでに皮膚のレチノイン酸やその代謝酵素の変化が、アレルギー性疾患や脱毛症といった皮膚疾患に関連することが報告されているが、そうした疾患も今回の皮膚の線維芽細胞とマスト細胞の相互作用による可能性があるとするほか、今回の成果については、マスト細胞の組織特性がかく乱されることによって、体のさまざまな組織で慢性的な炎症やアレルギーを引き起こしている可能性を新たに示すものであり、体のさまざまな組織で起こり得る慢性的な炎症やアレルギー対する予防や治療の開発につながる可能性があるとコメントしている。