カネカは4月4日、理化学研究所(理研)と共同で、樹木に多く含まれる成分であるリグニンの分解物を微生物の炭素源として利用し、バイオプラスチックの1種であるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を合成したと発表した。

石油資源からの脱却を目指し、植物バイオマスを利用した物質生産に関する研究が世界各国で進められている。これまで、植物バイオマスの中でも、セルロースなどは分解による糖への変換が幅広く進められてきたが、樹木に多く含まれるリグニンは分解性が低く、また分解後に得られるいくつかの分解物が微生物などへ毒性を示すなどの理由で、利用が困難であると考えられてきた。

今回、リグニンを構成する芳香族化合物、および類似する芳香族化合物を単一炭素源として複数種の微生物に与え、PHAの生合成を試みた。その結果、PHAの生産株として有名な細菌の1種であるラルストニアユートロファH16(Cupriavidus Necator)が、リグニンの構成成分である4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)をはじめ複数の芳香族化合物から、PHAを合成することを確認した。4-HBAを用いた場合、微生物の乾燥菌体重量の63wt%程度までPHAを微生物内に蓄積し、生産性が高いことも分かった。精製後に得られたPHAは、糖や植物油を原料として合成したPHAに比べ、分子量がやや低いものの、フィルムなどのプラスチック製品として利用可能な物性を示したという。

今回の成果から、これまで利用が困難であったリグニンを用いた、微生物による物質生産を目指した基盤技術の構築が期待される。また、リグニン分解物を含む製紙工場などの廃液利用へも応用が可能であり、幅広いバイオリファイナリ技術と融合することにより、新たなバイオマス産業の構築が期待できるとコメントしている。

リグニンからリグニン誘導体を経てポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が合成される際に予想される代謝経路