海洋研究開発機構(JAMSTEC)は3月31日、北海道南東沖100~700kmの太平洋プレート上(画像1)において、地下構造探査システムおよび海底地震計を用いて、地殻と上部マントルの大規模構造調査を実施した結果、海洋プレート生成時において、マントルの流動によりプレート運動が駆動されていたことを発見したと発表した。

成果は、JAMSTEC 地球内部ダイナミクス領域 海洋プレート活動研究プログラムの小平秀一プログラムディレクターらの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間3月31日付けで英科学誌「Nature Geoscience」電子版に掲載された。

今回の調査で得られた以上の観測事実を総合的に検討すると、約1億2000万年前に太平洋プレートが生成された際、プレート生成域である大洋のほぼ中央を南北に連なる中央海嶺(大西洋中央海嶺、東太平洋海嶺、中央インド洋海嶺など)においては、マントルの流動によって地殻の底が中央海嶺から離れる方向に引きずられていたと結論付けられた(画像2)。このことは、少なくとも中央海嶺近傍においてはマントルの流動がプレート運動の原動力であることを示す有力な証拠となるという。

画像1(左):調査領域。黒線が調査を実施した測線。画像2(右):今回確認された観測事実とプレート運動の原動力を示す模式図 (C)JAMSTEC

また、マントルが地殻を引きずるという今回の観測結果から、地殻はマントルより遅れて動く、つまりマントルの運動速度は海洋底の地磁気異常のデータから決定されたプレートの拡大速度より有意に速いことも示された。

また今回の観測データは北海道南東沖で確認されたが、このような地殻下部の構造不連続面は太平洋プレートの別の場所でも指摘されており、もしその場所においても強い地震波伝搬速度の方位異方性が確認されれば、今回の結論が、1地域のローカルな現象ではないことが証明されるとする。そのためJAMSTECでは、2014年6月にマントルまでの深海掘削候補点の1つに挙げられている太平洋プレートの中央部に位置するハワイ北方でも同様の調査を実施し、今回の発見で得られた結論の普遍性の検証を進めていくとした。

さらに、将来的にはハワイ沖において地球深部探査船「ちきゅう」も用いたマントル最上部までの掘削を実施し、実際のマントルのサンプルを得ることで今回の結論の検証を進めたいとしている。そして、プレートの自重により運動することを支持する観測データも存在することから、今後はプレート全体の動きが説明できる統合的なモデルを検討していくことも必要となるとした。