Q:日本料理で盛りつけや形がきれいだと思うものは何ですか?

世界の中でも独自の食文化を持つとして有名な日本。さまざまな種類の魚を生で食べる刺身の存在はそ個性を示す最たる物ではないでしょうか。また、日本料理と一口に言っても、外国人に人気の寿司や天ぷらなどをはじめ、さまざまなものが存在しています。

そこで今回は、日本在住の外国人20名に「日本料理の盛りつけや形がきれいだと思うもの(デザイン性が高いもの)」について聞いてみました。

■刺身などの和食は本当に目で楽しむことができます。(スウェーデン/40代後半/女性)
■お刺身とつま、葉っぱなど。(中国/30代前半/女性)
■刺身。(ベトナム/30代前半/女性)
■刺身です。(イギリス/40代後半/男性)
■魚の生け作り(刺身)。(韓国/40代後半/男性)
■刺身。(インドネシア/30代前半/女性)
■なんでもですが、特に生魚を使った料理、刺身の舟などが美しいです。(ポーランド/20代後半/女性)

やはり、最も多く回答があったのがこちらの「刺身」。食材自体の味を味わう、最も鮮度が求められる江戸生まれの料理です。デザイン的にも、魚に合わせた切り方、つまや薬味の色合いなども含め、それぞれは繊細ながら与える印象は迫力のひとこと…という舟盛り、鯉の洗いやてっさなどの薄造りなど、幅広い形があります。食の違いを最も明確に表す料理のため、生魚を食べない国の人には新鮮で記憶に残りやすいのでしょうね。ちなみに、色々な魚を食べる国は日本くらいだそうで、その理由には醤油の存在が大きいのだそうです。

■お寿司、ちらし寿司の鮮やかな色。野菜鍋の野菜の盛り付け方が綺麗だと思います。(フランス/30代後半/男性)

外国人が日本の代表的料理としてあげる鮨は、元々江戸の郷土料理。小さな酢飯の塊に魚介類を乗せたに握り寿司、寿司飯の上に具を盛り付けたちらし寿司ともに「江戸前寿司」の一種です。2007年には「すきやばし次郎」がミシュランの三つ星に認定。味のよさはもとより、熟練職人の手さばきやできあがりの美しさも含めて世界的にも高く評価されています。

■おせち、和食。(ブラジル/50代前半/女性)
■おせち。(スペイン/30代後半/男性)
■おせち料理です。(ペルー/40代後半/男性)

日本らしさあふれる季節料理のおせち。本来は節句の料理だったものが、最も重要な節目ということで正月料理を指すようになったそう。祝い肴三種、煮しめ、酢の物、焼き物など、縁起や祈願を込めた料理は彩りにも優れていますよね。お重に詰めるため、外国の人にとっては宝箱のような驚きを感じるのでしょう。今の日本では作る家庭も減りつつあるというのは、少し寂しいことですが…。

■鯛の塩焼き。(アメリカ/30代後半/男性)

縁起ものの象徴である鯛は、冠婚葬祭等の祭礼に欠かせない存在。「めでたい(鯛)」という言葉もあるほどです。新生児の生後100日目を祝う「お食い初め」の儀式では必須のため、若い世代にも比較的知られているのでは? 尾まできれいに反った形は確かに美しい造型です。

■会席料理です。(インドネシア/30代後半/男性)
■懐石料理全般。(イタリア/30代後半/女性)
■高級旅館で季節限定で出される日本料理はきれいです。(ロシア/20代後半/女性)

会席料理は、現在の料亭などで出される最も正統な日本料理の形。旬の食材を用いた一汁三菜や酒肴が流れに沿って提供されます。回答にある懐石料理も音は同じかつ日本料理の一種ですが、実は出自がまったく違うもの。「会席」は儀礼の際の本膳料理が由来の酒を楽しむための料理で、「懐石」は、禅寺の習慣を由来にした茶を楽しむための軽い料理。ちなみにご飯と味噌汁の出る順番も真逆です。美しさという点では同じですが…この微妙な違い、みなさんはご存じでしたか?

■京料理(スリランカ/50代後半/男性)

一般的に、野菜など素材をいかした味つけと盛りつけなど、五感で楽しめる料理として捉えられる京料理。元々は、新鮮な海産資源に乏しい地域性のため、質素な素材を活かすべく料理技術が発達してできた料理なのだそう。ちなみに、「京料理」と呼ぶようになったのは、明治以降。中国料理や精進料理、懐石料理、西洋料理など多様な手法を取り入れ今も進化を続けるジャンルです。

■お弁当と懐石料理。(ドイツ/30代後半/男性)

吉兆の松花堂弁当のような懐石の流れを汲む(高級な)お弁当でしょうか、それともお昼におなじみのお弁当? どちらにしろ日本のお弁当は独特です。昭和生まれの松花堂弁当は、見た目の美しさや機能的な十字形の箱で有名。一方、日々のお弁当は誰もがなじみ深い存在。昨今では幼児向けの盛りつけが進化したキャラ弁も世界的に人気。海外のデコカップケーキの向こうを張る(?)存在と言えます。

■デパートの地下の揚げ物です。(オーストラリア/40代前半/男性)

高級料理や祝い料理だけでなく、B級グルメだって日本料理の面白さ。コロッケや唐揚げ、春巻きなど日本ならではのアレンジを加えたバリエーションの多さは確かに魅力的。純粋な日本料理ではないものの、「デパ地下」の雰囲気も相まって、ちょっとしたアトラクション的なよさが感じられるのかもしれません。

■和菓子。煉り切りなど季節に沿ったデザインが凝っていると感じる。(シリア/30代前半/男性)
■さくらを使うところ。(トルコ/20代後半/女性)

日本の食べ物の中で「美しい」という言葉が最も似合うのは、実は和菓子かも。練り切りなどお茶席には欠かせないお菓子は、小さいながらも季節感に溢れており、ひとつの世界を創り出しています。色や素材も含め、柔らかな色合いなのに印象深いところもポイントです。「さくらを使う」という回答も、桜餅など(そのままの形ではないにせよ)和菓子ではよくあること。気軽に触れられる、日本の伝統的な食のデザインです。

料理の美しさの奥にも、きちんと意味があるのが日本の料理。本来の意図を守ることが、自然に見た目の繊細さから迫力まで表していると思うと面白いですよね。今では日本で食べられないものはないと言われ、前衛的な料理も増えています。ですが、こうした伝統は伝統として、大切に守っていきたいものです。