ケアマネージャーに聞く。「高齢者向け住宅」の選び方とは?

今後も加速する高齢化社会において高齢者向け住宅の新しい住まいの受け皿と言われているのが2011年10月よりスタートした、民間事業者が提供する「サービス付き高齢者向け住宅」(以下、サ高住)だ。バリアフリー、安否確認サービス、生活相談サービスの条件を満たした、高齢者が安心して暮らすことができる環境を整えた住宅であり、国は2020年までに60万戸の供給目標を掲げている。

一方、「特別養護老人ホーム」(以下、特養)などの費用が安いが空室待ちで入居しづらいと言われている公的施設や、「有料老人ホーム」などの介護サービスが充実しているが費用面では割高になってしまう民間施設など、サ高住を含め多様な高齢者向け住宅・施設が、「在宅」以外の高齢者の住まいとして選択されている状況にある。

そこで、多様な施設の中からどのように高齢者向け住宅・施設を選択していくべきなのか、一般社団法人介護事業操練所・理事長の三上博至氏を中心に実際の介護現場でケアプランの作成や入居施設の選定などの相談を受けている居宅の介護支援専門員(以下、ケアマネージャー)や施設運営にもかかわる施設系のケアマネージャーの方に話を聞いてみた。

ケアマネージャーや施設の運営者7名による座談会の様子


ケアマネージャーの目から見た「在宅」と「施設への入居」

自分の家族の誰かに介護が必要になったとき、家族は「在宅介護」もしくは「施設への入居」を考えることになるのだが、ケアマネージャーの方たちはどのように、相談を受け・アドバイスをしているのであろうか。何かしらの基準があればその答えは明確であるが、本人や家族の思いという目に見えづらい意向を汲みとっていく必要もあるようだ。

「ご家族の意向として、『在宅』介護を望まれる方も多いですが、ご家族の意向だけで動いてしまうのは危険だと思います」と話すのはケアマネージャーの伊藤みどり氏。
「まずは、一度ご家族に『在宅』介護を実践してもらい、現実を見てもらうのがよいと思います。自分で介護をして見えてくることも多いはず。介護保険でできることも限られてくるので要介護3以上の方を介護するのは厳しい、という現状を知ってもらうことも必要」とケアマネージャーの金澤美穂子氏は話す。
「病院にいる方の場合は、理学療法士と話しあいすり合わせていくべきですし、やはりご家族の気持ちを汲み取りながら『在宅』か『施設』への入居を決めていただくべきですよね」(前出・伊藤氏)と、ケアマネージャーが、本人、家族、施設、病院の意向を上手に汲み取りつつ掛け渡しを担っている状況が伺える。

特養」、「有料老人ホーム」、「サ高住」をどのように利用してもらうのがベストか


次に施設への入居を希望することになったとしても、どの施設に入居してもらうのがベストなのか、家族にとっては迷うところだ。前述したように近年では「サ高住」のような施設形態も増え、選択枠は今後ますます増加していくだろう。
そんな中、ケアマネージャーの方たちはどのような選択を取っているのだろうか。

「『特養』は相変わらず順番待ちの状況のため、迷っているならとりあえず入居申請をしておき、それまでは『在宅』もしくは他の施設で対応してもらうことをおすすめしています」というのは前出の伊藤氏。 他の介護専門員の方たちも「とりあえず入居申請をしておくことは、マイナスになることはないのですすめています」と、「特養」に関する意見は共通している。

では、「有料老人ホーム」「サ高住」についてどうなのだろうか。
前出の金澤氏は、「『有料老人ホーム』『サ高住』は金額的に高めのため、金額的に余裕がある人向けだとは思います。サ高住でも月額20~25万円、医療などをつけると月額40万円までかかってしまうケースもあるんですよ」と話すように金額的に割高になってしまう場合は入りたくても入れないことも考えられる。また、「自立している元気な方であれば、『サ高住』おすすめです。ただし、医療行為が入ってしまう重度の方であれば、病院に居た方が金額的な負担がかなり少なくなります」とケアマネージャーの須藤文子氏は話す。「サ高住」は比較的元気な方が入居するのに向いているようだ。

一方、施設運営の立場にいる方の意見を伺ってみると……。

「施設側の立場から言うと、月額30~40万円では現実的に入居者の方は入ってくれないかと思います。デイサービス併用にして、サービスの上限を2~3万円というふうに頭うちを決めてサービスを受けるしくみをおすすめしたいですね。『サ高住』については賃貸借契約のため気軽に入れるので、ご家族が介護疲れになる前に短期間でも入居してみることをおすすめします」と話すのは、介護施設運営ウェルフェアグループ・主任介護専門員の舟橋学氏。また、施設運営にも関わっている社会福祉法人・泉湧く家の介護支援統括部長の福田貴彦氏は「サ高住でも特定施設(施設内で生活しながら食事・入浴・排泄などに関わる生活・身体介助などの介護サービスを定額料金で受けられる施設)と同じくらいのレベルのサービスを用意しておかないと運営の面で厳しいですね。」と、入居者に満足のいく介護サービスを限られた金額内で提供しなければならないという運営側の苦労も伺える。

介護施設運営ウェルフェアグループ・主任介護専門員の舟橋学氏


ネット? 内覧会に参加? 高齢者向け住宅・施設の探し方はさまざま


次に、実際に高齢者向け住宅・施設をどのように探しているのか、聞いてみたところ、「『特養』は地元でやっているので、ケアマネージャーのつながりで自然に空室情報は耳に入ってきますね」と話すのはケアマネージャーの金子千里氏。
一方、「サ高住は内覧会を実施していたり、施設の営業マンの方が説明をしてくれたり、FAXも届くので、それらの資料をもとに、相談者には必要なときに情報を伝えている」(前出・須藤氏)という。
さらに、探される立場となる施設運営側の前出・福田氏によると「最近では息子さん・娘さんがインターネットで直接探したり、自立型の場合だと本人が探したりするケースが多いです」と話す。
「特に、費用の面を考えて、自宅から遠くなってしまうが、あえて地方の良い施設を選ぶ方もいるので、あまり自分の知らないエリアの場合はWEBで調べる必要があります」と話すのは、ケアマネージャーの山本由香里氏。ただし、みな共通してまずは自分の足で見に行くことが多いようだ。そして入居後は、本当に良い施設なのか面会にいくことも多いという。

最後に、高齢者向け住宅・施設を提案する際に気をつけている点や決め手になる部分について聞いてみたところ、「地域、金額、サービス、医療、経営主体」の項目をきちんと比較して決めていただきたいと話すのは前出・福田氏。「ご家族の方は経営主体を気にする方が多いですが、他の項目もきちんとみてほしい」と言う。
「古い施設の場合ハードでは敵わないけれど、ソフトで勝る施設もあるんですよ」(前出・金澤氏)、「施設で働いている介護福祉士の雰囲気で施設の良さがにじみ出てきたりもします。サービスが大事です」と話すケアマネージャーの方も多くいた。「医療であれば、どの範囲までの医療行為が可能なのかの確認は非常に大事」(前出・舟橋氏)。とさまざまな意見を聞くことができた。

入居者やご家族の希望やさらには置かれている状況もさまざま。その思いにできるだけ叶う住まいを提供していきたいという、ケアマネージャー・施設の運営者側のそれぞれの立場からの思いが伝わってきた。

【参加者】
セコム医療サービス(株) ケアサービス部次長 金子千里氏
セコム医療サービス(株) ケアサービス部 伊藤みどり氏
セコム医療サービス(株) ケアサービス部 須藤文子氏
社会福祉法人泉湧く家 介護部門統括部長 福田貴彦氏
介護施設運営ウェルフェアグループ 主任介護専門員 舟橋学氏
社会福祉法人鎌倉静養館 金澤美穂子氏
社会福祉法人鎌倉静養館 山本由加里氏

【主催・協力】
一般社団法人介護事業操練所
株式会社ネストレスト(ローゴのチカラ)
株式会社マイナビ

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