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社団法人ペットフード協会が実施した「平成25年度 全国犬・猫飼育実態調査」によれば、約974万匹の猫が飼われており、飼育世帯数はおよそ554万世帯にものぼるという。いまやペットの頭数は子どもの人口よりも多く、わが子のように接している人も多いのでは?

ペットを飼っていると心配になるのは病気のこと。新生活がスタートし、環境が変化しがちな春は、ペットにとっても体調を崩したり、病気を誘発したりする要因になりうる。

猫は自由気ままのようで、実は繊細?

日本ヒルズ・コルゲートが猫のペットオーナーである20代以上の男女536名を対象に行った調査では、引越し、就職などペットオーナー側の生活変化が起こった際に、3匹に1匹もの猫に変化があったことが判明。「粗相をする(51.3%)」、「頻繁に鳴く(43.0%)」といった項目が多く挙がった。

(ペットオーナー自身の生活変化時)愛猫にどのような変化があったか【体調の変化】

自由気ままなようで、実は繊細な猫。ストレスを感じやすい猫と感じにくい猫を比較したところ、ストレスを感じやすい愛猫の31.8%が何らかの病気にかかったのに対し、感じにくい猫は10%以上も少ない19.7%のみという結果に。

猫がストレスを感じるのはどんな時?

ストレスを感じている猫に対して飼い主はいったい、どのようなことに気をつければ良いのか。獣医師で日本動物医療センターグループCOOを務める上野弘道先生にうかがった。

――猫はどのような時にストレスを感じやすいですか?

上野先生「人間の性格が十人十色で異なるのと同様、猫もさまざまです。一般的に言われているのは、室内で飼われている猫の方が室外にいる猫よりストレスを溜めやすいということ。多少高いところに登れるような環境の方がストレスは溜めにくいですし、登るところの材質や猫砂の素材なども猫によって好みが異なります。また、急激な環境の変化や騒音もストレスになりますね。

ストレスが原因で膀胱炎になることも

先ほど紹介した日本ヒルズ・コルゲートの調査で排泄行動の変化について注目したところ、特に「トイレ以外のところで排泄する」「排泄時に鳴く」など、泌尿器系の疾患の可能性がある症状の有無が、ストレスを感じやすい愛猫は、ストレスを感じにくい愛猫に比べ、1.5倍という結果が明らかになった。

(ペットオーナー自身の生活変化時)愛猫にどのような変化があったか【排泄行動の変化】

泌尿器系の疾患にも様々な種類があるが、特にストレスが一因となる特発性膀胱炎というものがある。10歳以下の若い猫では泌尿器系疾患の6割は程度がこの特発性膀胱炎で、血尿が出る、おしっこが出にくい、トイレで痛がる、トイレではないところで粗相をしてしまうといった症状がでるので注意が必要だ。

この特発性膀胱炎は早ければ1日、平均3~7日で自然に回復する疾患である。しかし、この症状は再発しやすいのが特徴で、発症を繰り返すと膀胱が持続的に傷つくことで、ほかの大きな病気の原因にもなるので、動物病院でしっかりと治療をすることが大事とのこと。

ストレスを軽減させるにはどうしたらいいのか?

――それでは、猫のストレスを軽減するにはどうすればいいでしょうか?

上野先生「『こうすれば良い』というマニュアルはありません。むしろ、人間の一方的な観点で対処法を考えるのではなく、それぞれの猫の好みや何にストレスを感じるかをしっかり見てあげてほしいと思います。

好奇心旺盛な猫は動かないものばかりだとストレスを溜めますから、隠れ場所以外の家具を1週間に1回動かしてあげるなど、ちょっとした変化を与えてあげることが重要。ただし『隠れ場所になっていた家具をなくしてしまう』といった大きな変化は逆効果です。

ほかにもおすすめは、清潔さを保つためにトイレの数は最低でも猫の数+1カ所、例えば2匹飼っていれば3カ所用意すること。飼い始めの頃は、猫砂の種類を何パターンか用意すれば、どのタイプを気に入っているか見分けることができます」

とはいえ、働きながら猫を飼っている人にとっては、猫の好みを注意深く観察し、生活環境からストレスを軽減させることは容易ではないかもしれない。そうした人には特に、手軽に食事からストレスを軽減できるようなペットフードの活用もおすすめだそう。 上野先生「医食同源という言葉があるように、猫のストレス対策のためには食事に気を遣ってあげるのも重要です。例えば脳が幸福を感じるセロトニンの材料になる、必須アミノ酸のトリプトファン、そして、ストレス軽減に効果があるとされるミルクプロテインを配合したプリスクリプション・ダイエット「〈猫用〉c/d マルチケア コンフォート」というペットフードが近年開発されました。先ほどお伝えしたストレス対策と併せて、こうしたフードでストレスを軽減させてあげるという方法もおすすめです。」

あなたの愛猫は大丈夫? ストレスチェックリスト

ペットは家族。わが子に向き合うのと同じように、愛猫と向き合う意識を持つことも大切といえる。最後に上野先生は述べている。

上野先生「よく見ている飼い主さんなら、『いつもと違うな』ということに気づけると思います。いつもより毛づくろいが増えた、よく鳴くようになった、と思ったら、何かストレスになっているものがないか探してみてください。明らかに調子が悪そうだと思ったら、身近な動物病院に連れていき、きちんとプロの診断を仰いでください」

この春、引っ越す予定がない人でも、次に紹介するチェックリストを活用して、愛猫がストレスを感じていないか、特発性膀胱炎の疑いがないか確認してほしい。

猫のストレス危険度チェックリスト

<家庭環境におけるストレス要因>
・[多頭飼いの場合]食事の場所が他の猫と一緒である
・[多頭飼いの場合]他の猫と仲が悪い
・トイレの状態が適切でない(寒い場所にある、清潔な状態が保たれていない)
・安心できる避難場所がない
・お客さんが頻繁に来る
・最近引越しをした
・退屈(外出できない、窓の外が見えないなど、環境刺激の減少がストレスにつながる)

<ストレスによる行動・症状>
・身体を過剰になめている
・頻繁に鳴く
・物音に異様に反応する(すぐに驚く)
・神経質/怯えている
・遊びが減った
・不適切な場所で排泄する
・隠れることが多い(人やペットとの接触を避ける)
・近づくと攻撃的になる
・猫同士で喧嘩をする

猫の特発性膀胱炎症状チェックリスト
・トイレ以外の場所で排尿する
・尿のニオイや色が変わった
・何回もトイレに行く
・血尿が出る
・排尿時に鳴く
・気張っていても尿が出にくい