岡山大学は3月6日、理化学研究所(理研)のスーパーコンピュータ「京」を用いて、メタンハイドレートが分解し、メタンが分離するメカニズムを解明することに成功したと発表した。

同成果は、同大大学院自然科学研究科(理学部)理論化学研究室の矢ヶ崎琢磨 特任助教、松本正和 准教授、田中秀樹 教授および名古屋大学工学研究科の研究チームらによるもの。詳細は米国化学会の国際科学雑誌「Journal of Physical Chemistry B」オンライン版に掲載された。

今回の研究では岡山大のグループが、さまざまな温度でのメタンハイドレート分解過程について、「京」を用いて10万分子以上の大規模シミュレーションを実施。その結果、メタン分離の速度に関する新たなメカニズムを見出したという。

さらに研究を進めたところ、同メカニズムにおいて、ハイドレートが分解する過程でのメタンの過飽和水溶液と、それから生じる気泡が重要な役割を果たしていることを発見。この現象はこれまでの規模の計算機では検証できない現象であり、「京」の活用により、初めて検証できる現象となったという。

なお今回の成果について研究グループでは、実験だけでは困難な微視的な物性の正確な予測を通じて、気泡の生成を抑制したり、逆に促進したりすることで、メタンハイドレートの分解速度を制御できることが示唆されたことから、将来的なメタンハイドレートの制御方法の指針が示され、それがメタンガスの効率的な採取方法の研究への応用につながることが期待されるとコメントしている。

「京」を用いたシミュレーションで得られた、分解途中のメタンハイドレートの様子。中央の水色のかたまりが、分解しつつあるメタンハイドレートの骨格で、分解がある程度進むと、図のようにメタンの気泡が生じ、分解が加速する(融解した水を含めて個々の分子は描かれていない)