2013年に創立125周年を迎えた、世界最大級のNPO団体ナショナル ジオグラフィック協会を母体とし、日本ではスカパー! やケーブルTVなどのCS放送で視聴可能なナショナル ジオグラフィック チャンネルは2月27日、3月16日(日)20時から、1980年代に世界的に一世を風靡した科学ドキュメンタリー番組「コスモス」の続編、「コスモス:時空と宇宙」を日本でもスタートすることを発表した(画像1)。60分番組で、全13話を予定し、毎週日曜日20~21時の本放送のほか、リピート放送もある(翌水曜22時55分~24時、木曜11時25分~12時30分、土曜20時~21時)。2カ国語放送。全世界170カ国でも放送される。

画像1。オリジナルを彷彿とさせるタイトルバック。(c) ナショナル ジオグラフィック チャンネル

コスモスは、天文学者で作家の故カール・エドワード・セーガン博士をホストおよび監修として、日本を含む世界60カ国で放映され(本国米国と日本では1980年に初放送)一世を風靡した宇宙を中心とした科学ドキュメンタリー番組で、米国テレビ芸術科学アカデミーの主催するエミー賞で3部門を受賞するなど、米テレビ界では伝説となっている名作である。

日本でも40代から上の科学、中でも宇宙が好きだという人は、観た記憶をお持ちの方も多いのではないだろうか。また、番組そのものは観られなくても、その内容をまとめた図鑑や書籍などを購入した、もしくは図書館などで借りて読んだなどという人も多いに違いない。中には、同番組を見て実際に研究者になった、という人もいるのではないだろうか。

またオリジナルのコスモスはBGMも印象的で、SF映画「ブレードランナー」のBGMや、2002年日韓ワールドカップのテーマソングなどで知られるギリシャのシンセサイザー奏者・作曲家のヴァンゲリスによるBGMの数々を思い出す方もいることだろう。

そんな歴史的な科学ドキュメンタリーの続編は、科学や宇宙に興味のない人でも楽しめるという番組コンセプトを引き継ぎ、現代の特殊視覚効果技術と最新の研究理論を駆使し、21世紀の視聴者へ向けて新たに製作された内容となっている。製作された時期から30年以上も経ってしまったので情報・知識として大幅にアップデートしたリメイク版ともいえる。製作費用は40億円をかけたという。

今回、コスモスを蘇らせたのは、オリジナル版の共同制作者でセーガン博士の未亡人でもあるアン・ドルーヤン氏と、天体物理学者スティーブン・ソーター博士。さらに、映画「テッド」の監督などでお馴染みのセス・マクファーレン氏、「24-TWENTY FOUR」や「スタートレック」シリーズの脚本家ブラノン・ブラーガ氏などがプロデュースに加わった。また気になるBGMは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「アベンジャーズ」のアラン・シルヴェストリ氏が担当している。

そして番組の顔として、セーガン博士に代わってホストを務めるのは、アメリカ自然史博物館の天文物理学者で、教育科学番組のホストを5年務めたニール・ドグラース・タイソン博士だ(画像2)。タイソン博士はセーガン博士に影響を受けて天体物理学を志したという人物で、ニューヨーク・セントラルパークウエストに設置されているアメリカ自然史博物館が管理する「ヘイデン・プラネタリウム」の監修や、各種ニュース番組の科学系の解説者も担当し、ツイッターではフォロワー数が120万人を超える。米国では、セーガン博士の後継者ともいえるような原題の「科学界の顔」ともいうべき存在の1人である。

ちなみに、ナショナル ジオグラフィク チャンネルの宇宙系番組などを視聴している人なら気がつかれた方もいるかと思うが、それらの番組でも実はお馴染みの人物。日系アメリカ人3世の理論物理学者ミチオ・カク博士らと共に、よく解説役としてさまざまな番組で顔を出しているのだ。

画像2。ニール・ドグラース・タイソン博士。(c) ナショナル ジオグラフィック チャンネル

内容は、オリジナルのコスモスでもそうしたシーンがあったが、今回も架空の宇宙船に乗り込み、宇宙を自在に旅する内容となっているという。その過程で、人類が自然の法則を発見してきた歴史の歩みをわかりやすく紐解き、そこから導き出された宇宙と地球の謎や驚異的な発見の数々を、30年以上を経て大幅に進化した最新のCGやVFXを多用した映像で描き出したとしている。コスモスが一世を風靡したのは、当時の最新のCGやVFXが駆使されていたことも理由の1つとされるが、今回も期待される(画像3・4)。

画像3・画像4(右):最新のCGやVFXにより、宇宙が表現される。画像3・4共に(c) ナショナル ジオグラフィック チャンネル

また知識や情報のアップデートの面では、今さら説明するまでもないだろう。例えば宇宙探査機だけでもよくわかる。日本放映時の1980年の最新探査機といえば、NASAのボイジャー1号&2号だ(それが今でも太陽圏を飛び出して星間空間を飛行しているのは驚異というより、感涙に値する)。ボイジャーは木星から海王星までの巨大惑星たちを1979年から10年かけてフライバイ探査を行ったわけだが、その後、木星圏はガリレオが周回軌道から探査を行い、土星圏は現在もカッシーニが周回軌道で探査を続行中という具合で、どれだけ情報が増えたかは簡単に想像できるというものである。

ほかにも、火星には複数台の探査ロボットが送り込まれて、現在もキュリオシティが生命の兆候を見出そうとしているし、NASAだけでなくJAXAやESA(欧州宇宙機関)など世界中の機関が30年以上の間にどれだけ地球軌道上の天文観測衛星を打ち上げたかは数え上げるだけでも大変で、太陽系外惑星の発見など、数々の革新的な成果がなされている。宇宙に関する知識が、30年以上の時間によってどれだけ増えたかを知るいい機会でもあるというわけだ。

なお、第1回「銀河に立つ」に関しては特別放送スケジュールとして、ナショナル ジオグラフィック チャンネルだけでなく、ナショジオ ワイルド、FOX、FOXCRIME、FOXムービー プレミアムの5チャンネルで16日20時からの同時放送が決定している。さらに第1回は初回放送のあと、同チャンネルでは22時、24時(17日0時)と1時間置きに3連続で放送される。そのほか、第2回「生命の流れ」が放送される23日までは特別編成となっており、初回放送を含めて第1回は合計18回も放送される予定だ(通常、同チャンネルでの同一週での同じ回の放送は、初回を含めても3~5回ぐらい)。

現在、3~4月の放送分として第7回までの日本語版のサブタイトルが公開されている。第3回「知識の栄光」(同3月30日)、第4回「光と影」(同4月6日)、第5回「空にあふれる幻想の世界」(同4月13日)、第6回「より深い世界へ」(同4月20日)、第7回「クリーンルーム」(同4月27日)となっている(第8回以降は未発表)。