中国における商業ファクタリング会社の設立について

2012年から外国企業が中国でファクタリング会社を設立可能に
ファクタリング(中国語で「保理」)は、「外商投資産業指導目録」で禁止又は制限される事業には属しないから、外国企業も中国でファクタリングに従事する企業を設立することができる。ただ、ファクタリング事業に関する規定はまだ十分に整備されていないのは現状である。現行規定は以下のとおりである。

中国商務部は、2012年6月27日に「商業ファクタリング試行関係業務に関する通知」(商資函[2012]419号、以下「商業ファクタリング通知」という)を公布し、上海浦東新区及び天津濱海新区において商業ファクタリングを試行することし、これにより外資による商業ファクタリング会社の設立も認められた。

また、同年10月9日、商務部は「商業ファクタリング試行の実施方案に関する回答」(商資函[2012]919号、以下「商業ファクタリング回答」という)を公布し、商業ファクタリング会社の設立の基本的な条件を定めた。

その後、「商業ファクタリング通知」及び「商業ファクタリング回答」に基づき、上海浦東新区及び天津濱海新区はそれぞれ「上海市浦東新区商業ファクタリング企業設立試行弁法」(浦府総改[2012]2号、以下「上海試行弁法」という)及び「天津市商業ファクタリング業試行管理弁法」(津政弁発[2012]143号、以下「天津試行弁法」という)を施行し、商業ファクタリングの定義、商業ファクタリング会社の設立条件、業務範囲、監督管理等につき詳細かつ具体的な規定を定めた。

さらに、商務部は2012年12月に、香港、マカオのサービス提供者が深圳市、広州市において商業ファクタリング会社を設立できることとし、2013年8月には重慶両江新区、蘇南現代化建設示範区、蘇州工業園区においても商業ファクタリング会社を設立できることとした。

関係地方政府は、商業ファクタリング会社の設立を奨励しており、営業税、企業所得税(地方保留分)の「二免三減」、自社用のオフィス用不動産の購入等に関する補助金、高級管理人員に関する奨励金等の支援政策を実施している。


「商業ファクタリング」の定義は上海浦東新区及び天津濱海新区等の地方規定により定められた
「商業ファクタリング通知」は、「商業ファクタリング会社を設立し、企業のために貿易融資、販売先別帳簿管理、顧客資産信用調査及び評価、売掛債権管理及び支払督促、信用リスク担保等のサービスを提供する」と定めているが、「商業ファクタリング」の明確な定義はない。

「天津試行弁法」、「上海試行弁法」及び「重慶両江新区商業ファクタリング(試行)管理弁法」(渝商委発[2013]55号、2013年12月25日施行、以下「重慶試行弁法」という)によると、「商業ファクタリング」とは、貨物販売契約又はサービス契約により生じた売掛債権につき債権者のために貿易融資、売掛債権管理、及び支払督促等の総合的な商業貿易サービスを提供することを指す。

ちなみに、「上海試行弁法」の有効期間は2013年12月31日までとなっていた。上海市浦東新区商務委員会に確認したところ、当該試行弁法の施行が既に停止され、新しい規定を制定しているようである。したがって、本文は主として「天津試行弁法」及び「重慶試行弁法」に基づいて説明をしている。


商業ファクタリング会社の設立条件が明確に定められた
「商業ファクタリング回答」等の関係規定によると、商業ファクタリング会社を設立するには以下の条件を具備しなければならない。

(1)   登録資本が5000万人民元以上であること

(2)   金融業の管理経験を有し、かつ不良な信用記録がない2名以上の高級管理人員を有すること

(3)   他の事業を兼業経営しないこと

(4)   会社の名称に「商業ファクタリング」(「商業保理」)の文字を明記すること

(5)   外国投資者の場合、当該外国投資者又はその関連会社がファクタリング事業に従事した業績及び経験を有すること

 なお、「天津試行弁法」では、「商業ファクタリング会社の主な投資者は企業法人又はその他の経済組織でなければならず、かつ商業ファクタリング会社の設立を申請する前1年間の総資産は5000万人民元を下回ってはならない」といった特別の条件も設けられるので、設立の際には、会社登録地の商務部門に詳細を確認する必要がある。


商業ファクタリング会社の業務範囲が限定されている
商業ファクタリング会社は以下の業務を行うことができる(「天津試行弁法」第9条)。

(1)   売掛債権譲渡の方式による貿易融資の提供

(2)   売掛債権の収支決済、管理及び支払督促サービスの提供

(3)   販売先別(分類)帳簿の管理

(4)   商業ファクタリング会社の業務と関係する非商業性不良債権の担保の提供

(5)   顧客資産信用調査と評価サービスの提供

(6)   関係諮詢サービスの提供(「重慶試行弁法」では、「貨物貿易に関する融資諮詢サービスの提供」と規定されている(第7条)。)

(7)   法律、法規が認めるその他の業務


また、「商業ファクタリング通知」等の関係規定によると、商業ファクタリング業務の展開について、原則として独立した企業を設立し、兼業経営を行ってはならず、預金の受け入れ、貸付等の金融活動に従事してはならず、債権の支払督促業務に専門的に従事し又は受託することが禁止され、債権取立業務に従事することも禁止される。

さらに、「重慶試行弁法」では「借入資金又は他人の委託資金による投資」(「上海試行弁法」では、「投資の受託」が禁止されている。)も禁止されているので、留意する必要がある。


商業ファクタリング会社の資金運営にも規制されている
商業ファクタリング会社の運営資金は、会社の登録資本、銀行からの借入れ等の間接融資、債券の発行等による直接融資、及び外債の借入れ等により構成される。「商業ファクタリング会社のリスクを防止し、その経営の安全を保障するため、商業ファクタリング会社のリスク資産は当該会社の純資産の10倍を超えてはならない」とされている(「天津試行弁法」第10条及び「重慶試行弁法」第10条)。

ちなみに、上記の商業ファクタリング会社の「リスク資産」(担保残高を含む)は、当該会社の総資産から現金、銀行預金、国債を控除した後の余剰資産の総額により確定される。


商業ファクタリング会社の監督管理が強化しつつある
「商業ファクタリング回答」等の関係規定によると、商業ファクタリング会社は、中国人民銀行徴信中心の売掛債権質権登記公示システムにおいて売掛債権の譲渡に関する登記手続をしなければならず、売掛債権の権利帰属状況を公示しなければならない。

また、商業ファクタリング会社は、会社登録情報、高級管理人員の資格、財務状況、業務展開状況、会社内部管理制度の設置状況等を商務部門に提出し、毎月、毎四半期に会社の業務情報を報告しなければなりません。

さらに、(1) 出資持分の5%を超えた主要株主の変更、(2) 純資産の10%を超える重大な損失又は賠償責任、(3) 董事長、総経理等の高級管理人員の変更、(4) 減資、合併、分割、解散及び破産申請、(5) 未確定の重大な訴訟、仲裁、等の事項が発生した場合には、5営業日以内に商務部門に報告する必要がある(「重慶試行弁法」第14条)。


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