ブランドダイアログは2月26日、地図をベースに営業情報を記録/表示するSaaS型CRM/SFA「GEOCRM.COM」を発表した。

すでに「KnowledgeSuite」によりSFA市場で一定のシェアを獲得している同社だが、新サービスは「従来製品では取り込むのが難しかった要望に対応するかたちで生まれた新しいCRM/SFA」(ブランドダイアログ 代表取締役社長 兼 CEO 稲葉雄一氏)と言い、特許出願中の3つの独自技術を組み込み、外回りの多い従業員の操作性/利便性を追求している。

Geo TaggingとGeo Loggingで営業活動を効率的に記録

ブランドダイアログ 代表取締役社長 兼 CEO 稲葉雄一氏

GEOCRM.COMは、「すべてのモバイルワーカーへ - 街を企業の情報ストレージに」というコンセプトを掲げており、CRM/SFAサービスでありながら、モバイルワーク支援ツールという側面も併せ持つ。

UIは、スマートフォン画面とPC画面の2種類が用意されている。

主に外出先で利用するスマートフォン画面に関しては、現在地の周辺に位置する顧客の表示機能、位置情報付きの業務報告機能、位置情報付きの出退勤管理機能などを搭載。一方のPC画面は、各従業員の行動履歴が確認できるなど、管理者向けの機能も組み込んでいる。

稲葉氏はこうした機能を備えるGEOCRM.COMについて、「地図上の場所を記録するGeo Taggingだけでなく、地図上に行動履歴を登録するGeo Loggingとしての役割も果たすのが大きな特長の1つ。各人の営業活動をより高い精度で記録することができる」とアピールする。

GEOCRM.COMのPC画面とスマートフォン画面

2つのUIのうち、「特にスマートフォン画面はUX(User Experience)にこだわった」(稲葉氏)という。作業報告は「GPS情報を基に訪問先を選択」、「目的を選択」、「作業内容の入力」の3ステップで完了。地図上には現在地の周辺に位置する顧客の情報が表示されるため、目的地の確認だけでなく、「ちょっとした空き時間に、ご無沙汰している近所のクライアントを訪問することもできる」(稲葉氏)。

また、通信状況が悪い場合も、入力内容と位置情報を端末内に一時保存し、通信状況が改善されたタイミングでデータがアップロードされるほか、周辺顧客のデータはプッシュ型で送信されるため、例え通信"圏外"に行ったとしても、直前に取得した情報を参照するかたちで作業を継続できる。

営業記録のみならず、出退勤の登録を行えるのも同サービスの特長の1つだ。営業先や作業現場へ直行した際もその位置情報を証左として業務についたことを記録できるため、ワークスタイルを革新するツールとしても活用できる。

GEOCRM.COMのスマートフォン画面

スマートフォンからの利用方法

以上のような機能を備えることから、外回りの従業員のみならず、人材管理面でも効果が期待されるが、稲葉氏は「あくまで営業活動等をサポートするもので、監視するためのツールではない。利用する営業社員らのことを考え、記録をとりすぎないよう配慮している」と設計方針を語る。

GEOCRM.COMの行動履歴は常に記録されるわけではなく、報告処理を行ったときのみ実行される。例えば、営業の合間に喫茶店で休憩したとしても、そこで営業内容の報告ボタンを押さなければ、それが管理者に伝わることはない。したがって、「従業員は監視されているという感覚に陥らずに利用できる」(稲葉氏)。

PC画面で表示したときの様子。顧客情報がピンで登録されている

ピンをクリックすると営業担当者の情報やレポートの内容が表示される

位置補正、電池消費抑制、顔写真取得――GEOCRM.COM、3つの独自機能

先のとおり、GEOCRM.COMには、ビジネスモデル特許出願中の技術が3つ組み込まれている。

1つは、「緯度経度位置補正システム」だ。

通常、地図上の緯度経度情報と住所情報は密接に関連付けられており、地図上のピンの位置を変更すると住所も自動的に変わってしまう。したがって、例えば、巨大なビジネス施設などで入口を明示するためにピンの位置を修正すると、会社所在地の住所も変わってしまい、顧客情報との整合性がとれなくなってしまうことがある。

そこで、GEOCRM.COMでは、緯度経度情報と住所を切り離して修正できる機能を搭載。ピンの位置を変更しても、元の入力情報のまま登録を終えられる。

緯度経度位置補正システムの概要

2つ目は、「モバイル通信状況に応じたデータ一時保存方法とGPSデータ通信切替方法」である。

先に紹介したとおり、GEOCRM.COMでは、通信状況が悪い場合でも、報告処理を行うことができる。このときのデータは端末内に保存され、通信状況が良くなったときにまとめてサーバへ送信される仕組みだ。こちらが技術名に含まれる「データ一時保存方法」に該当する。

これと併せてGEOCRM.COMには、GPS機能を細かく制御し、電池の消費量を抑制する機能も備わっている。高い精度のGPSデータを取得するのは報告機能を実行したときのみ。移動中や、(通信状況が改善した際の)データアップロード時はGPS取得に使用するデバイスを限定する、バッテリーに優しい設計になっている。

なお、GEOCRM.COMでが、GPS(Global Positioning System)のみならず、IPS(Indoor Positioning System : 公衆Wi-Fiの情報を基に屋内の場所を特定するシステム)からも位置情報を取得する。そのため、公衆Wi-Fiが整備された環境であれば、フロアや建物内の位置も含めて詳細な位置情報を登録できる。

また、「2018年までに準天項衛星を少なくとも3基打ち上げることが閣議決定されているため、日本のGPSの精度は近い将来確実に向上する。現在の誤差は4、5mだが、これが3cmにまで改善すると言われている」(稲葉氏)ことから、数年後には高精細な位置情報が入手可能になり、応用範囲が広がる可能性も高いという。

3つ目は、画像認識技術に適応した個人情報と個人特定画像を取得するクロール技術。こちらは、稲葉氏が「脳の補助記憶装置」と表現するもので、登録された名刺情報を基にGEOCRM.COMがWeb上をクロールし、SNSなどから担当者の顔写真を自動的に取得する。企業名や名前だけでは思い出せない担当者も、顔写真を見れば思い出せるケースが多いことから「脳の補助記憶装置」としての役割を果たす。

こちらは、「ウェアラブルデバイスが普及すればさらに重宝されるはず」(稲葉氏)と、将来も見据えた機能として取り込まれている。

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「GEOCRM.COMは、ルート営業から不動産店員、配達員まで、すべてのモバイルワーカーに向けたサービスになっている」と語り、自信を覗かせる稲葉氏。「中小企業の負担にならないようにな価格帯でリリースする予定なので、今春のリリースを楽しみにしてほしい」と続け、新サービスへの期待を誘った。