理研など、トポロジカル絶縁体のディラック状態を固体と固体の界面でも検出

 

理化学研究所(理研)と東京大学は2月20日、新物質のトポロジカル絶縁体(Bi1-xSbx)2Te3薄膜とインジウムリン(InP)半導体を接合した素子を用い、トポロジカル絶縁体に特徴的なディラック状態を固体と固体の界面で検出したと発表した。

同成果は、東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻の吉見龍太郎博士課程大学院生(強相関物性研究グループ 研修生)、菊竹航氏(強相関理論研究グループ 研修生)と、東京大学大学院 工学系研究科の塚﨑敦特任講師(現東北大学 金属材料研究所 教授および理研 客員研究員)、ジョセフチェケルスキー特任講師(現マサチューセッツ工科大学 准教授および理研 客員研究員)、理研 創発物性科学研究センター 強相関界面研究グループの高橋圭上級研究員、川﨑雅司グループディレクター(東京大学大学院 工学系研究科 教授)、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(東京大学大学院 工学系研究科 教授)らによるもの。詳細は、英国の科学雑誌「Nature Materials」に掲載される予定。

近年見いだされたトポロジカル絶縁体は、内部が絶縁状態で、表面が特殊な金属状態を示す新しい物質である。特に、表面の金属状態はディラック電子が存在するディラック状態で、光学特性や熱特性、力学特性などに優れたナノ炭素材料のグラフェンにも見られるものである。ディラック電子は、固体中で質量がなく、不純物の影響も小さいため、従来の半導体よりも高速で固体内を動くことができる。この特性から、トポロジカル絶縁体は低消費電力素子としての応用が期待され、活発に研究が行われている。しかし、これまでトポロジカル絶縁体のディラック状態は、真空と固体との境界である表面で実験的に検出されたことはあったが、実際に固体素子へ適用する上で、必要となる固体と固体との界面では、ディラック状態の検出やその性質についての報告はなかった。

研究グループは、トポロジカル絶縁体の1つである(Bi1-xSbx)2Te3薄膜を既存の半導体材料のインジウムリン(InP)基板上に単結晶成長させ、両者を接合した素子を作製した。そして、同素子に対して、物質界面の電気的特性を評価し、界面電子の状態を調べることが可能なトンネル伝導測定を行った。

図1 試料の断面図とトンネル伝導測定のイメージ。トポロジカル絶縁体と、真空との境界である表面や半導体のような固体との界面にはディラック状態と呼ばれる特殊な金属状態(図中赤枠)が現れる。緑色で示した電子の界面でのトンネル電流を測定することで、ディラック状態を検出した

まず、トンネル電流の大きさを磁場と電圧に対して調べた。その結果、磁場を加えるに伴い、トンネル伝導度の変化量が電圧に対して振動する様子が観測された。この振動はランダウ量子化と呼ばれる現象によるもので、電子の性質を調べる重要な手掛かりとなる。さらに、この振動のピーク電圧の磁場変化を調べたところ、磁場の平方根に比例してピーク電圧が変化することが分かった。この振る舞いはディラック電子に特徴的な振る舞いであり、検出された界面の電子状態がディラック状態であることを示している。

図2 (a)トンネル電流の解析データと(b)ディラック電子状態を示す磁場依存性。(a)トンネル電流の変化量(トンネル伝導度)がランダウ量子化によって振動する様子が観測された。測定磁場を1T(テスラ)ずつ加えて測定した結果を下から順に並べている。また、図中の●は振動のピークで、その電圧ではトンネル電流が多く流れている。○は反対に、トンネル電流が減っている。(b)(a)の振動が最大、最小となるピーク電圧(それぞれ●、○)が磁場の平方根に比例して変化する様子。nはランダウ量子化によって離散化したエネルギー状態をそれぞれ示す

次に、界面でのディラック電子の速度(フェルミ速度)を試料組成比に対して調べた。磁場に対するピーク電圧の変化を解析することにより、このフェルミ速度を求めることができる。解析の結果、フェルミ速度は、組成に対して系統的に変化しており、その速度がこれまで報告されていた同物質における表面に存在するディラック電子の速度とほぼ同じであることが分かった。これにより、表面のディラック状態が、固体と固体との界面においても保持されていることを実証した。

図3 ディラック電子のフェルミ速度の組成依存性。■がディラック電子が界面で動く速度(フェルミ速度)。●がこれまで報告されていた同物質における表面ディラック電子の速度。トンネル伝導測定で得られた図2の振動(n=±1)の結果から、ディラック電子のフェルミ速度をそれぞれ見積もった。界面でも、ディラック電子が表面とほぼ同じ速度を有することが分かった

ダイオードの最も基本的動作は整流作用だが、今回それをトポロジカル絶縁体で初めて実証した。今後、3端子デバイスへの拡張が図れることができれば、ディラック状態を用いた高移動度トランジスタや低消費電力の論理回路などへの応用も期待できる。また、従来、トポロジカル絶縁体であるかどうかの判別には、表面ディラック状態の光電子分光による観察が主だったが、今回適用した固体界面でのトンネル伝導測定は今後の物質判別手法として重要になると考えられるとコメントしている。

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