第64回ベルリン国際映画祭の授賞式が15日(日本時間16日)、ドイツ・ベルリンで行われ、コンペティション部門に出品されていた山田洋次監督作『小さいおうち』で、タキ役を演じた女優の黒木華が日本人女優として4人目、そして最年少で最優秀女優賞の銀熊賞(Silver Bear for Best Actress)を受賞した。

第64回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した女優の黒木華

授賞式で黒木は、「グーテン・アーベント。こんばんは。まさかこの場に立てるとは思っていなかったのでドイツ語をもう少し勉強していればよかったと後悔しております」と挨拶。そして、「この場に立てるのは、本当にこんなに素晴らしい映画を作ってくださった山田監督のおかげです。とても感謝しています」と山田監督への感謝の気持ちを述べ、「皆さんにこの映画を気に入ってもらえたと思うとすごくうれしいです。映画に関わった皆さんに伝えようと思います。本当にありがとうございました。フィーレン・ダンク」と喜びを表現した。

記者会見では「すごくうれしいです。着物だとうまく動けないのですが、飛び上がりそうになりました」と名前を呼ばれた時の瞬間を振り返り、「私がトップに立ったのではなく、作品が評価されて、この賞を受賞できたと思っています。私は地道に頑張らなきゃなと思います。本当に、ここに来れたのも監督のおかげですし、タキちゃんという役をやらせていただいたのも、本当にラッキーだったなと思っていますので、みんなで喜んで、私は、これから、自分にできることを頑張っていきたいなと思います」と、改めて監督への感謝と共に、今後の抱負も語った。

撮影現場についても「すごく刺激的な現場でした。監督は、ずっとチャレンジし続けていて、若々しくて、素敵な方です。そんな監督を見ていると私ももっとついていかなきゃ、という気持ちで毎日楽しかったです」と振り返り、「私もタキちゃんのように静かにそこにいる人だと思うので、そこは似ているかなと思います。でも、あんなに女性的にいられるかなと思うと、ちょっといられないかなとも思いますね。素晴らしい日本の女性ですよね」と映画で演じたタキについても語った。

今回の受賞について審査員は、「『小さいおうち』には、いろいろなタイプの女性が出ていましたが、タキは、その全ての女性をつなぐキーパーソンとして大事な役どころでした。今回、女性陣が活躍している作品がコンペティション部門の中に多数ありましたが、黒木さんの演技力が群を抜いていました」と評価。そして、「山田洋次監督に、賞をあげたいと思っていましたが、他の作品への賞もあり、賞が足りなかったくらいになってしまいました。その中で、女性を素敵に描いている作品として、黒木さんに女優賞を差し上げましたが、それは山田洋次監督を含め、作品を代表してあげたものです」と、山田監督と作品全体についても称えた。

なお、銀熊賞は、日本人として、1964年第14回今村昌平監督『にっぽん昆虫記』・羽仁進監督『彼女と彼』で左幸子、1975年第25回熊井啓監督『サンダカン八番娼館 望郷』で田中絹代、2010年第60回若松孝二監督『キャタピラー』で寺島しのぶが受賞して以来4人目。日本人女優としては最年少の受賞となる。

また、山田洋次監督作品の同映画祭への出品は、『たそがれ清兵衛』以降、8作連続。またコンペティション部門への出品は、『母べえ』以来、6年ぶり5作目で、コンペティション部門に出品された山田洋次監督の作品で賞を受賞するのは今回が初めて。

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