東レは2月12日、単層カーボンナノチューブ(CNT)薄膜トランジスタ(CNT-TFT)を塗布プロセスで作製し、移動度13cm2/Vs、オンオフ比106を達成したと発表した。

詳細は、3月17日~20日に青山学院大学で開催される「春季応用物理学会」で発表される予定。

CNTは優れた電気的・機械的特性を持ち、タッチパネルの透明電極などで実用化が始まりつつある。中でも、単層CNTは半導体として高いポテンシャルを有していることから、ディスプレイ用TFTやICタグ、センサなどへの応用を目指し開発が進められている。通常、単層CNTは半導体型が2/3、金属型が1/3の混合物として合成されるので、その中から半導体型CNTを高純度で取り出す必要がある。さらに、取り出した半導体型CNTを均一に分散して薄膜化することにより、高いTFT特性が実現する。

今回、塗布プロセスで作製したCNT-TFTで移動度13cm2/Vs、オンオフ比106を達成した。具体的には、高半導体純度の単層CNTと半導体ポリマーを複合化した。CNTは平面のグラフェンシートを丸めて円筒(チューブ)状にした構造をしているが、通常の合成方法ではその丸め方がランダムに行われるため、半導体型が2/3、金属型が1/3の混合物となる。CNTの高い半導体特性を生かすためには半導体型CNTを高い純度で取り出す必要があるが、これまでは純度が思うように上がらない、または純度は上がるがCNTの品質が低下してしまうという問題があった。さらに、純度の高いCNTほど凝集する力が強く、均一な分散が困難だった。

同社では、これまで半導体ポリマーを単層CNTの表面に付着させることで、導電性を阻害することなく単層CNTの凝集を抑制できることを見出している。今回、同技術を単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)が開発した高半導体純度の単層CNTに展開することにより、高い半導体純度と品質を維持しながら、単層CNTの均一分散を実現した。これにより、高半導体純度の単層CNTの均一なネットワークをインクジェットなどの塗布方法で形成できるようになり、移動度10cm2/Vs以上の高いTFT特性を実現できたという。

また、TFTの実用化に向けては、広い面積に数多く配置されたTFT素子間のバラツキをできるかぎり小さくする必要がある。半導体純度を高める前の単層CNTでは、金属型CNTが電極間を橋渡し(短絡)する確率が高く、素子間バラつきの原因の1つとなっていた。今回開発した技術で金属型CNTによる短絡確率が低下したことにより、素子間バラつきを1/4まで低減した。

東レは今後、2016年頃の実用化を目指し、塗布型半導体としての技術確立を進めていくとコメントしている。

半導体型単層CNTの分散薄膜