日本の格差社会の暗部をえぐった中村蒼主演映画『東京難民』が22日に公開を迎えることを受け、『カイジ「命より重い!」お金の話』の著者である経済ジャーナリストの木暮太一氏が、"東京難民"にならないための必須5カ条を掲げてリスクを避ける生き方を説いた。

映画『東京難民』に出演する中村蒼(中央)、大塚千弘(左上)、山本美月(左下)、青柳翔(右上)、金子ノブアキ(右下)

映画『東京難民』は、普通の大学生が、お金も家も携帯電話もなくし、あっという間にホームレスへと転落していく、"明日は我が身"の現代社会の現実を描いた作品。同作を見た木暮氏は「親の会社が倒産して、仕送りを止められ、家を追い出され、ネットカフェで暮らし、危険なバイトに手を出し、裏の世界に入り、ホームレスに…。一人の人間が短期間にこれだけのことをすべて経験することはまれなことだったとしても、一つ一つの出来事は、いつ、誰に訪れてもおかしくないのでは?」と問う。

木暮氏いわく、2014年現在、日本の全世帯の30%が収入200万円以下で生活し、貯蓄なし世帯も30%超えているのだという。ごく普通の幸せを望み、ありふれた暮らしを営んでいた人々が、ある日突然転落してしまうことも…。木暮氏は「読んでもらえれば、"リスクを避けて生きていく方法"や、そのヒントを見つけることができると思います」と、"東京難民"にならないための5カ条を掲げ、「"堕ちないようにする努力"は、ちょっとしたことなのです。そのちょっとしたことを日々意識しているか、それが道を分けると思います。すべてを失う前に、自分の身は自分で守らねばならないという事実に気づくべきです。なによりも、それが最初の一歩かもしれません」と持論を展開した。

【1】最低限の自分の生活費を知っておく

「堕ちていく人は"生活費の最低ライン"を決めていません。だから、そのときの気分で無駄遣いをし、気づくとお金がなくなり、困ってしまいます。そこでまた適当にお金を借り、借りたお金がなくなれば、さらに適当に借りる。けれど、お金を借りるのは簡単でも、返していくのは決して簡単なことではありません。今、駅や公園、寒空の下でダンボールにくるまって暮らしている人たちも、最初はそういう小さな借金がはじまりだったのかもしれません。『これくらいだったら大丈夫』と、小さい借金を甘く見てはいけません」

【2】最低3カ月分の生活費を貯金しておく

「最低限の貯蓄は絶対に必要です。でも、多くの世帯が"貯蓄なし"なのが現状です。これではいざという時に自分を守れません。たとえ今、クビになっても、1カ月もすれば次の仕事が見つかる、だから何とかなると思っているかもしれませんが、それは甘いです。仕事を探すのに1カ月かかったとします。でも、働き始められるのは、早くてもその翌月からです。そして、その給料が出るのはさらに1カ月後です。自分の身を守るためには、少なくとも3カ月分の生活費が必要だということは覚えておかなければいけません」

【3】「楽して稼げる」というもうけ話に乗らない

「楽してもうかる話に弱い"という人は要注意です。自分だけが得をする、誰も知らない情報、そう聞くと飛びついてしまう。しかし、そんなもうけ話は現代においてまずありえないと考えたほうがいいです。"楽してもうけたい"なんていう発想の人がもうかることは、社会の仕組みにおいてありえないのです」

【4】ネットの世界のつながりに依存しすぎない

「ネットの世界のつながりに依存している人"も難民化する可能性が高いですね。なぜなら生身の人間に頼るということに慣れていないからです。ネットカフェなんて行かないで、取りあえず友人の家を転々としながら職を探せば、生活費はもっと抑えられたはずなのに、それをしませんでした。『迷惑だろうな』『もしかしたら、断られるかな』。そう怖がって頼ることができないのです。日頃から人に頼ることに慣れていないと、こうした状況を心理的に乗り越えられないのです」

【5】堕ちないための最低限の努力を怠らない

「"貢献していない"と堕ちてしまいます。世の中は、それぞれが協力することで成り立っています。誰かに世話を焼いてもらうことばかり考え、人のために動くこと、時間を割くことを拒む人間は、だんだん孤立していってしまいます。誰かのためになるから、逆に頼ってもらえ、協力関係と依存関係が生まれるのです。まずは、"一日一善"から始めましょう。『誰かのためになることをしよう』と考えて行動することで、他人から頼られ、同時に他人に頼れる人間になります」

■プロフィール
木暮太一。経済入門作家、経済ジャーナリスト、出版社(マトマ出版)経営。慶應義塾大学経済学部に入学し、在学中に執筆した学生向けの経済学解説本が大ヒット。卒業後は富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て、独立。現在は、企業、大学、団体向けの講演活動も行っている。主な著書に『カイジ「命より重い!」お金の話』『カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話』(サンマーク出版)、『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)、『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』 など。