岡山大学は2月6日、現在、集中治療室など広く臨床で使用されている鎮静薬「デクスメデトミジン」を局所に投与することで、投与部位の炎症を抑制するという薬理作用を発見したと発表した。

同成果は、同大病院歯科麻酔科の樋口仁 講師、同大学院医歯薬学総合研究科歯科麻酔・特別支援歯学分野の助川信太朗 大学院生、宮脇卓也 教授、同研究科口腔病理学分野の長塚仁 教授らによるもの。詳細は国際雑誌「Anesthesia and Analgesia」に掲載された。

研究グループはこれまでの研究から、デクスメデトミジンを局所麻酔薬に添加すると局所麻酔の効果を増強できることも報告しているが、今回の研究では、炎症を引き起こす物質「カラゲニン」と「カラゲニン」にデクスメデトミジンを混ぜたものをそれぞれマウスの足に注射し、その腫れの程度、炎症に関わる細胞(白血球)の数、炎症に関わるタンパク質の発現を比較したところ、デクスメデトミジンを注射した足では、炎症による腫れが有意に抑制され、炎症に関わる細胞の数も減少していることが確認されたという。

カラゲニンにより誘発された腫れに対するデクスメデトミジンの作用。デクスメデトミジンの局所投与により腫れが抑えられている。(a)はカラゲニンのみを注射したマウスの足。(b)はカラゲニンとデクスメデトミジンを注射したマウスの足

また、炎症に関わるタンパク質の産生についても、デクスメデトミジンを投与した足では有意にその産生が抑制されていることが確認され、デクスメデトミジンを局所に投与すると、投与部位の炎症を抑制できるという薬理作用があることが判明したという。

今回の成果を受けて研究グループでは、現在の歯科治療に使用されている局所麻酔剤は、その麻酔効果が弱いため、麻酔作用の増強のために血管収縮薬が添加されているが、同薬には心拍数をあげるなどの副作用があり、高齢者や心疾患を有する患者への使用には注意が必要であるほか、局所麻酔が必要な歯科手術(抜歯、歯科インプラント手術など)においては、手術の後の炎症による腫れや痛みを避けることができないが、デクスメデトミジンを局所麻酔薬への新たな添加薬候補として考えると、心拍数を上げるなどの副作用を起こさず、かつ抗炎症作用も有する次世代の歯科用麻酔剤の開発につながることが期待されるとコメントしているほか、すでにそうした薬剤の開発も精力的に進めているとしている。

歯科用局所麻酔剤に抗炎症作用が有る場合と無い場合の違い