米New York Timesの報道によれば、米Appleは現在開発中の腕時計型デバイス提供に向けて、2つの新しい充電技術搭載を実験しているという。1つはワイヤレス充電技術で、現在すでにスマートフォン等でも実装が行われているもの、もう1つはディスプレイパネルに太陽電池の層を組み込む方法で、これにより従来よりも長時間でのデバイス駆動が可能になるという。

同件はNYTが2月2日(現地時間)付けの記事の中で関係者の話として報じている。それによれば、Appleは同社の腕時計型デバイス向けに磁気誘導方式のワイヤレス充電バッテリ技術の実験を続けているという。

同技術はすでにNokia等のスマートフォンでも利用されているとのことで、特定の充電ポイントやプレート上にデバイスを置くことによって充電が開始されるというもの。また磁気誘導とNokiaというキーワードから、この文面をそのまま受け取るのであれば「Qi」方式が採用される可能性が高いとみられる。現在、ワイヤレス充電の標準としてはQiと、Qualcommが推進するWiPowerの主に2種類があるが、後者は磁界共鳴方式という電磁誘導とは異なる手法を用いているため、今回のケースとは異なるものとみられる。

このほか、新しい充電技術として「太陽電池」が採用される可能性にもNYTの記事では言及している。新しい腕時計型デバイスでは曲面ガラスパネルを採用するとされているが、このパネルの層に太陽電池機能を折り込むことで、太陽光での充電を可能にするというのだ。NYTの記事では、9 to 5 Macの過去の報道を引用してAppleが太陽電池関連の技術者を募集したことにも触れており、また現在はGoogleに買収されたNest Labsの人物で、過去にiPhoneやiPodの開発も行っていた元Apple技術者のTony Fadell氏が、Apple社内で太陽電池をデバイスに組み込むべく奮闘していた様子を話していることも紹介している。

太陽電池は屋内の照明では充電力が足りず、屋外ではデバイスがユーザーの服のポケットに収まっている時間が長く、結果としてiPhone等への導入が失敗したという。バッテリ技術そのものの進化もほとんど望めず、Appleを含むメーカーらは低消費電力プロセッサの利用やソフトウェア技術の改良で駆動時間延長に努めてきた。だが、今後続々と登場するとみられる腕時計型デバイスやGoogle GlassのようなHUDではバッテリも小さく、駆動時間がわずか数時間程度という報告もある。ユーザーはそのたびにデバイスを取り外して充電せねばならず、使い勝手が非常に悪い。これが結果的にユーザーに敬遠されることになるのではないかという懸念がある。太陽電池搭載による利用しながらの充電、そして端子を露出せずとも充電が可能なワイヤレス充電の採用などは、こうした使い勝手の悪さをある程度解消するための方策というのだ。