富士通研究所と古河電気工業は2月3日、サーバ機器内の高速データ伝送を実現する光インターコネクト向けに、多数の光ファイバを一括で接続する多心光コネクタを開発したと発表した。

詳細は、2014年2月1日より米国サンフランシスコで開催されている国際会議「SPIE Photonics West 2014」にて発表される。

近年、サーバの処理能力向上に伴い、サーバ内部のデータ伝送量は増加しており、CPU間やCPU・メモリ間では25Gbps以上といった高速な伝送速度が要求されている。光を用いないこれまでの電気配線方式では、高速化によって、信号の減衰による劣化が大きくなるため、ボード間のような短い距離でも伝送が難しくなってきている。このことから、信号劣化の小さい光ファイバを用いてデータ伝送を行う、光インターコネクトが注目されている。

サーバ機器内部のボード間に光インターコネクトを導入するためには、光信号を並列に伝送する複数の光ファイバ同士を一括して接続する多心光コネクタが多数必要となる。しかし、大量に使用するためには価格が高く、機器内部への光インターコネクト導入の課題となっていた。

従来の多心光コネクタでは、コネクタに光ファイバを固定した後に、高精度の研磨を行って端面を形成することで、複数の光ファイバの端面を揃えていた。こうすることで、光ファイバ同士が隙間を生じることなく接触し、低損失で接続できるが、研磨は光コネクタごとに行うため、費用がかかり過ぎていたことが課題だった。そこで、費用のかかる研磨を行わなくても低損失で接続できる簡易な光コネクタの実現が期待されていた。

今回、富士通研究所の設計技術と古河電気工業の製造技術を活かし、サーバ内で利用できる簡易構造の多心光コネクタを開発した。具体的には、光ファイバの接続時にわずかに変形するバネ機構を形成した光コネクタを新たに開発した。これにより、長さがばらついている光ファイバを、光コネクタの変形により長さに応じて微小にたわませることで、全ての光ファイバの端面を揃えることが可能となった。また、光ファイバの端面をレーザ加工で形成することで、研磨と同様な端面形状を実現し、光ファイバ同士を隙間なく接触することを可能にした。これらの技術を組み合わせることで、研磨工程を用いることなく、従来の多心光コネクタと同等となる0.2dB以下の低損失で光ファイバ同士を接続することに成功した。

簡易構造の光コネクタ、(左)形状、(中央)外観、(右)ファイバ接続面

簡易構造の光コネクタでのファイバ接続原理

開発した光コネクタは、費用がかかっていた研磨工程が不要となり、従来の半分以下の費用で、同等性能を実現している。光コネクタをボードに設置する際には、富士通研究所と古河電気工業が共同開発している、少ないスペースで4つの光コネクタを収容可能な光コネクタハウジングを用いると、最大96本のファイバの接続が可能となる。

ハウジングを用いたボードへの簡易構造光コネクタの実装イメージ

同技術により、サーバ機器内のボード間で光インターコネクトを安価に使用することができ、将来のサーバ機器の高性能化を実現できる。今後、富士通研究所と古河電工は、2016年頃までにサーバ機器への適用を目指して開発を進める。また、サーバ機器内に限らず、ラック間を接続する光ケーブルなど、様々な用途への展開を図っていくとコメントしている。