滋賀医科大学(滋賀医大)は1月30日、厚生労働省研究班(指定研究)の「NIPPON DATA(ニッポンデータ)研究」の、国民栄養調査参加者を対象とした長期追跡研究NIPPON DATA80において、食事から摂取した魚介類由来の脂肪酸摂取が多い人ほど、長期間の循環器疾患死亡リスクが低いことが明らかになったと発表した。

成果は、滋賀医大 社会医学講座の三浦克之教授(同大 アジア疫学研究センター・センター長兼任、NIPPON DATA研究 研究代表者)、同・宮川尚子特任助手らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、欧州動脈硬化学会誌「Atherosclerosis」2月号に掲載される予定だ。

NIPPON DATA80は1980年に実施され、無作為抽出された日本全国300地区の一般住民が対象である。具体的には、30歳以上の成人男女の内、脳卒中や心筋梗塞などの既往歴のある者などを除外した9190人(男性4028人、女性5162人、平均年齢50.0歳)で、1980年から2004年までの24年間にわたる追跡が行われた。

24年の追跡期間中、879人が循環器疾患(脳卒中または心臓病)で死亡。魚介類に多く含まれる「長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸」である「エイコサペンタエン酸(EPA)」と「ドコサヘキサエン酸(DHA)脂肪酸」の合計摂取量で4群に分けたところ、最も少ない群の摂取量は1日0.42g(さんま1/4尾程度に相当)、最も多い群で1日1.72g(さんま1尾弱に相当)だったという。

性別、年齢、食塩などほかの栄養素摂取量などの交絡因子を調整した循環器疾患死亡リスクは、摂取量の最も少ない群を基準としたところ、最も多い群で20%低く(ハザード比0.80(95%信頼区間0.66-0.96))、魚介類由来の脂肪酸摂取量が多いほど統計学的に有意に低くなった(傾向性の検定p=0.038)。1980年時点の年齢で30-59歳と60歳以上に分けて分析した結果、30-59歳の者において魚介類由来脂肪酸摂取量と循環器疾患死亡リスク、脳卒中死亡リスクとの関連をより強く認められたのである。

今回の研究の対象者である日本人では、最も摂取量の少ない群でも米国の平均摂取量の約2倍を摂取していたが、これよりさらに多い魚介類由来脂肪酸摂取で循環器疾患死亡リスクが低くなることが示された。なお、日本人を対象とした20年以上にわたる長期間の調査は、今回が初めてのものだという。また今回の研究では、初めて日本で魚介類由来脂肪酸摂取が多いほど脳卒中死亡リスクが低くなることが示されたとしている。

日本人は国際的に見ても最も魚介類を多く摂る国民であり、それが同時に「和食」の特徴だ。毎日さんま1尾程度の魚介類からの脂肪酸を摂取することで、将来の脳卒中や心臓病を予防できる可能性を示したとしている。