首都大など、CNTが熱を電気エネルギーに変換する性能を持つことを発見

首都大学東京(首都大)と東京理科大学は1月29日、高純度の半導体型単層カーボンナノチューブ(s-SWCNT)フィルムが、熱を電気エネルギーに変換する性能を持つことを発見したと発表した。

同成果は、首都大学東京 理工学研究科の真庭豊教授、東京理科大学 工学部の山本貴博講師、産業技術総合研究所(産総研) ナノシステム研究部門の片浦弘道首席研究員らによるもの。詳細は、「Applied Physics Express(APEX)」に掲載された。

現在、先進国で消費されているエネルギーの約2/3が未利用のまま排熱として環境に放出されている。このため、廃熱エネルギーを効率良く利用可能なエネルギーに変換する技術が求められている。その中で、いわゆるゼーベック効果と呼ばれる現象を利用した、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換技術が注目されている。今回の研究では、熱電変換素子を構成する主要材料にCNTが使われた。CNTを用いた熱電変換素子は柔軟で室温近くで動作可能であることが実証され、実用レベルを目指した、より高性能な素子開発が続けられている。

今回の研究では、熱電変換素子の熱電変換材料としてSWCNTが利用された。SWCNTは金属型(m-SWCNT)と半導体型(s-SWCNT)の2種類に大別されるが、通常、この2種類のSWCNTは混在して生成される。従来の研究では、このm-SWCNTとs-SWCNTが混在した材料が使われていたが、今回の研究ではs-SWCNTを高純度に濃縮する技術により、(m-SWCNT)/(s-SWCNT)の存在比を制御したフィルム材料を新たに開発して用いられた。

その結果、s-SWCNTの割合によって、熱を電気(温度差を電圧)に変換する効率を表すゼーベック係数Sが10倍以上変化することが分かった。最も高純度のs-SWCNT材料では、s-SWCNTの混合比が従来型SWCNTの約2.8倍となる約67%を達成し、実用されているBiTe3系熱電材料に匹敵する170μV/Kが得られた。また、単位面積、単位温度差当たりの発電電力の尺度となるパワーファクターPが、従来型SWCNTの約4倍となった。この結果は、純度が違うSWCNT材料を組み合わせるだけで、容易に熱電変換素子を作製可能であることを意味しているという。さらに、ドープ剤を注入することにより、従来型SWCNTにドープした場合のパワーファクターの約4倍である108μW/2mが得られることも分かった。

今回の研究では、得られた巨大ゼーベック効果の原因について、理論的シミュレーションを行い、フィルム状試料内に多数存在するSWCNTとSWCNT間の接触部分が重要な役割を担っていることが示唆されたという。SWCNTは高い固有の熱伝導度を持つため、普通に考えると熱電変換材料としての利用は難しいように思われるが、この機構では熱の伝わりにくいSWCNT間の接触部分で電圧が生じるため、熱電変換性能として良い結果が得られたと考えられる。今後の実用化に向けた熱電変換素子の開発においても、このような界面制御が重要な1つの要素となると思われるとコメントしている。

(a)半導体型ナノチューブの割合とゼーベック係数Sの関係。(b)SWCNT間結合部の電子状態の様子(例)

s-SWCNTフィルムと(m-SWCNT)と(s-SWCNT)が混在したフィルムを10対組み合わせて作製されたCNT熱電変換素子。この素子はSWCNTを分散させた2種類のペーストを基盤(厚紙)に塗布するだけで作ることが可能。一端を手のひらで温めることにより、約2.6mVの電圧が発生した



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