京都大学(京大)は1月21日、大阪大学(阪大)の協力を得て、免疫系の形成と維持に重要な働きをしている「サイトカイン」(細胞間でやり取りされる多様な生理活性を持つタンパク質の1種)の1つの、「インターロイキン-15(IL-15)」を産生する細胞を体内で可視化することに成功したと発表した。

成果は、京大 ウイルス研究所 生体防御分野の生田宏一 教授、同・原崇裕 助教、同・谷一靖江 助教、同・大学 医学研究科 大学院の生崔広為(Guangwei Cui)氏、阪大 医学研究科の石井優教授、同・免疫学フロンティア研究センターのシェンドール・シモンズ特任助教らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東海岸時間1月20日付けで米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

ウイルスや細菌などの病原微生物と戦っている免疫系は、リンパ球とその働きを支える微小環境の「支持細胞」や「ストローマ(間質)細胞」などから成り立つ。ストローマ細胞はサイトカインを分泌してリンパ球に与えることで、免疫応答を制御している。しかし、サイトカインは量が少ないために直接検出することが難しく、サイトカインを作るストローマ細胞の実態は長く不明の状態だった。

IL-15は、免疫系のTリンパ球の一部や「ナチュラルキラー(NK)細胞」の分化と維持に必要であることが知られている。そこで研究チームは今回、IL-15を産生する細胞を蛍光タンパク質で可視化したマウスを作製し、IL-15を産生するストローマ細胞の生体内における分布と実態を明らかにすることにしたというわけだ。そこでまず、IL-15遺伝子の発現パターンを正確に再現するために、内在性IL-15遺伝子座に蛍光タンパク質「CFP(cyan fluorescent protein)遺伝子」を導入したIL-15-CFPマウスが作製された。

次にIL-15-CFPマウスの免疫組織においてCFPが検出され、IL-15産生細胞が同定された。IL-15を産生しているのは、まず胸腺では「胸腺髄質」の最も成熟した「胸腺上皮細胞」であることが判明(画像1・2)。また骨髄では、「間葉系細胞」の1種である「VCAM-1陽性PDGFRβ陽性CD31陰性Sca-1陰性のストローマ細胞」だった。さらにリンパ節では、ストローマ細胞の1種である「細網線維芽細胞」と血管内皮細胞。脾臓では、ストローマ細胞の1種の「VCAM-1陽性細胞」だったのである。

そしてマウスの加齢と共に、脾臓内のIL-15産生細胞が増加することも確認された(画像3)。さらに、マウスにリポ多糖を投与して炎症を起こさせると、IL-15産生が増加することもわかったのである。

画像1(左):IL-15-CFPマウスの胸腺におけるIL-15産生細胞。画像2(中):EpCAM陽性(赤)の髄質胸腺上皮細胞の一部でもIL-15(緑)が検出されている。画像3(右):IL-15-CFPマウスの脾臓おけるIL-15産生細胞。IL-15(赤)を産生する細胞が加齢と共に著しく増加していることがわかった

今回の成果により、IL-15が限られたストローマ細胞だけで作られることが明らかになった形だ。また、一部のIL-15産生細胞はIL-7産生細胞と共通していたが、まったく異なる場合もあることがわかったという。こうした結果から、一見同じように見えるストローマ細胞がサイトカイン産生能によっていくつかのグループに分けられる可能性が出てきたとした。今回の研究をきっかけにして、これまで不明であったストローマ細胞の分類とそれぞれの機能が明らかになることが期待されるとしている。