大陽日酸は1月22日、カーボン材料とフッ素樹脂の複合材料の製造工程に独自のカーボンナノチューブ(CNT)を用いて、カーボンの添加量を従来の1/1000程度に抑えつつ、導電性、熱伝導性、機械特性を高めたフッ素樹脂を開発したと発表した。

高機能フッ素樹脂成形品

カーボン材料と樹脂の複合材料は、帯電防止のための導電性、成形加工ならびに切削加工時の際に熱膨張を避ける目的で高い熱伝導性などの特性が得られることから、半導体部品や自動車部品など多くの分野において応用が期待されている。従来技術でフィラーとして最も使われているカーボン材料は、カーボンブラック(CB)だが、帯電防止機能を与えるためには、樹脂にCBを5~15wt%程度添加する必要があり、成形加工の不良や樹脂本来のしなやかさが損なわれるといった問題がある。また、半導体分野では、カーボン材料の発塵によるコンタミのリスク低減要求が厳しく、カーボン材料の添加量をさらに低減させ、樹脂本来のしなやかさを維持し、かつ発塵リスクの少ない複合材料が求められている。

今回、CNTを用いることにより、従来の部材に比べて1/1000程度のカーボン材料添加量で、導電性、熱伝導性、機械特性を備えたフッ素樹脂の開発に成功した。また、工業向けの簡便かつ低コストなプロセスにより、従来の導電性フッ素樹脂と同等のコストを実現した。具体的には、繊維長が50~150μmと長いCNTと、フッ素樹脂(PTFE、平均粒径25μm)を高度に複合化することで、CNT添加量0.01wt%において帯電防止レベルの導電性2.4×107Ω・cm、CNT添加量0.05wt%において母材樹脂の2.6倍の熱伝導率0.64W/(m・K)、CNT添加量0.1wt%において、母材樹脂に比べ、11%の曲げ強度・圧縮強度の向上を達成したとしている。

開発した高機能フッ素樹脂の性能

今後は確立した高機能フッ素樹脂製造プロセスにおいて、スケールアップ設備を導入し、実証試験を実施していく。10月には、年産10tの高機能フッ素樹脂のサンプル製造体制を確立し、サンプル販売を開始する予定。