今回のテーマは、カタカナビジネス用語「リスケ」です。もとは金融用語だったようですが、今では多くのビジネスシーンで使用されています。そこで本稿では、リスケの手順やメールの文例などを交えながら、「リスケ」の意味や使い方について解説します。

  • リスケの意味や使い方を理解していますか?

リスケの意味と語源

リスケは、「リ・スケジュール」の略語で、「日程・予定・計画を変更する」という意味を持つ英語【reschedule】から来たカタカナ用語です。

一般的なビジネスシーンでは、元々の意味のとおり「予定を変更する」という意味で用いられ、打ち合わせや出張の日程を変更したい、納期を延期してほしいなど、やむを得ずスケジュールを変更するような場面で使用します。

金融業界で使う場合には少々意味合いが異なり、主に「返済期間や借り入れ条件の変更」が必要な時に用いられる言葉になります。今でこそ、ビジネスシーン全般で使用されている「リスケ」ですが、もとは金融業界で使用する専門用語でした。

銀行から融資を受けていた企業が、予定通りに返済することが困難になってしまった場合にやむを得ずリスケするわけですが、そうなると銀行から経営に問題ありと判断されてしまいます。

このように、一度決めた予定や計画を変更するということは、金融業界ではもちろんのこと、ビジネス全般において相手からの信用を失うことにつながりかねません。安易にリスケを申し出るのではなく、まずは、できる限り自分側だけで調整するよう努めましょう。

リスケの使い方と例文

一般的なビジネスシーンでは、「予定を変更する」という意味になるため、取引先への訪問や商談日時変更、社内会議や飲み会等の日程変更、納期の延期や前倒しなど、スケジュールを組み直す場面で使用します。また、金融機関が絡む場合には、「リスケ=返済計画の見直し」という意味になります。

(例文)

  • 明日予定していたA社との商談ですが、先方の都合でリスケとなりました。
  • ○○さんの送別会がリスケとなりました。日程は第4土曜日です。
  • 急な出張が入ってしまったので、明日の会議をリスケさせてほしい。
  • 銀行に借りていたお金の支払いについてリスケできないか相談する。

このように、社内で使用する分には問題ありませんが、社外に向けて「リスケ」という言葉を用いるのは不適切です。「リスケ」という行為自体が大変失礼であるため、略語かつカタカナ用語である「リスケ」を使用するのは避けた方が無難です。

社外に対しては、「予定の変更をお願いするのは可能でしょうか」などと丁寧な日本語でお願いするようにしましょう。

リスケをお願いする方法と注意点

取引先や顧客など、社外に対してリスケを願い出る場合は、電話するのが基本です。まずは、電話で謝罪とお詫びの気持ちを直接伝え、その後メールを送ります。ただし、電話での連絡がなかなかつかない場合に限り、先にメールを入れておきます。

メールを入れる目的は、変更後の日程に間違いがないかを確認することと、それを記録として残しておくことにあります。社外へのリスケは、「電話で直接謝罪+メールで確認」という二段階で行いましょう。

また、日程調整だけで何往復もメールのやりとりをするのは、相手に更に迷惑をかけてしまうことになります。始めから幾つかの候補日を提示し、相手に選んでもらうと良いでしょう。

優先すべきは相手の都合です。こちら側のメンバーが全員出席できない日程になるとしても、主要メンバーさえ出席できれば良し、と割り切ることも必要です。

さらに、相手が納得できる理由を示すことも重要です。リスケを行う理由が、他社との打ち合わせと重なった、優先すべき会議が入ったのだとしても、そのまま述べてはいけません。

相手に「うちの優先順位は低いのか」と不信感を抱かせることになりかねませんので、「急な出張」や「担当者の体調不良」など、不快な思いをさせないよう配慮しましょう。

メールでリスケをお願いする際の文例

ここで、メールでリスケをお願いする際の文例をご紹介します。こちら側の勝手な都合でリスケを行うのですから、まずは冒頭で、謝罪の言葉とともにお詫びの気持ちを示すことが大切です。

また、スケジュール調整後は、相手の柔軟な対応に感謝の気持ちを述べた上で、確認の意味も込めて変更後の日程を記します。相手に対する最大限の配慮が伝わるような丁寧な文章を心がけましょう。

電話がつながらず、メールでリスケを依頼する際の具体的な文例

○月○日打ち合わせ 日程変更のお願い

株式会社○○
○○様

いつもお世話になっております。
株式会社○○の○○です。

先日はお忙しい中、時間を割いていただき、
誠にありがとうございました。

先ほどお電話させていただいたのですが、
ご不在とのことでしたので、
メールにてご連絡させていただきます。

次回○月○日(○曜)に予定しておりましたお打ち合わせの件ですが、
急な出張が入ってしまいました。
誠に申し訳ございません。

こちらの都合で恐縮ではございますが、
以下のいずれかにご変更いただくことは可能でしょうか。

・○月○日(○)10:00~12:00
・○月○日(○)9:00~18:00
・○月○日(○)13:00~17:00

もし、いずれの日程も難しい場合には、
○○様のご都合のよろしい日をご連絡いただけると幸いです。

ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんが、
ご検討の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

電話で日程を調整し、確認のメールを送る際の具体的な文例

○月○日打ち合わせ 日程変更の確認

株式会社○○
○○様

いつもお世話になっております。
株式会社○○の○○です。

このたびは、急なお願いにもかかわらず、
快くお引き受けいただきまして、心から感謝申し上げます。

念のため、先ほど変更させていただいた日程を
ご連絡いたします。

・○月○日(○)10:00~11:00

ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
当日は、私と○○、○○の3名でお伺いいたしますので
何卒よろしくお願い申し上げます。

「~させていただく」の使い方に注意

リスケの文例の中に、「変更させていただいた」というフレーズが登場しましたが、「~させていただく」という表現は、敬語として「誤り」とする見解があります。確かに、二重敬語という誤った使い方をする人が多いのも事実ですが、すべてが「誤り」と否定されるものではありません。

文化庁は、「~させていただく」の使い方について、「相手側または第三者の許可を受けて行う場合」「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合」であれば誤りではないとしています。リスケは、まさにこれに該当する状況であるため、「変更させていただいた」という表現は誤りではありません。

二重敬語となる表現は、たとえば、「書類を拝見させていただきます」というように、「見る」の謙譲語である「拝見する」と、「する」の謙譲語である「させていただく」を一緒に用いるような状況を指します。リスケを願い出る場合には、敬語の使い方にも十分注意しましょう。

リスケの類語

取引先や顧客など、社外に対して「リスケ」という言葉を用いるのはNGですが、では、どのように言い換えれば良いのでしょうか。「リスケ」の類語を紹介します。

  • 日程変更
  • スケジュール調整
  • 予定を組み直す
  • シフトする
    (主に、人の動きに関して勤務時間変更・配置変更などを行う際に使用する言葉)
  • 前倒し・繰り上げ
    (予定を早めたい場合に使用する言葉)
  • 後ろ倒し・繰り下げ・先送り
    (予定を延期したい場合に使用する言葉)

このように、「リスケ」の言い換えはいくつかあります。何を変更するのか、どう変更するのかに合わせて使い分けるようにしましょう。

キャンセルとの違い

リスケという行為が、当初の予定を一旦キャンセルすることから、リスケと「キャンセル」を混同してしまう人がいるようですが、両者には明確な違いがあります。

たとえば、不動産業で「金曜日に予定していた内見について、お客様から都合が悪くなったとキャンセルの連絡が入った」とします。ここで、改めて内見の日時を組み直したいという申し出があれば「リスケ」ですが、キャンセルされたままで話が終わってしまえば「内見取り消し」ということですから、「キャンセル」扱いとなります。

「キャンセル」の意味を調べてみると、「売買などの契約を取り消すこと。また、約束・予約を取り消すこと」とあります。つまり、リスケは「予定を変更すること」、キャンセルは「予定を取り消すこと」になります。両者の違いに注意して、正しく使い分けるようにしましょう。


本文でも述べたように、「リスケ」を頻繁に行えば、相手からの信頼を失ったり、自己の管理能力を疑われたりしても仕方ありません。

決して多用することなく、まずは自分側の予定を調整することで解決できないものか尽力し、どうしても無理な場合に限りリスケを申し出るようにしましょう。