米カリフォルニア州在住の女性が車の運転中にGoogle Glassをかけていたことで交通違反切符を切られた件で、サンディエゴ交通裁判所が出した判決が話題になっている。もともと前方の視界を遮ることなく透過ディスプレイに情報を映し出すことが主眼のGoogle GlassのようなHUD (Head-Up Display)だが、これは従来の車内TVスクリーン等と同じ扱いになるのか、新型デバイスを巡る論争が巻き起こっている。

同件はReutersなどが報じている。細かい経過についてはNBC San Diegoの報道が詳しいので、合わせて参照してみてほしい。

今回、Google Glass着用で反則切符を切られたのは米カリフォルニア州テメキュラ(Temecula)在住のCecilia Abadie氏、同氏が昨年2013年10月29日に同州サンディエゴ近郊にあるI-15上を走っていていたところ、Aero Driveとの交差付近でハイウェイパトロールがスピード違反を理由にAbadie氏の車を停車させた。通常であればここで計測結果を理由にスピード違反の切符を切るだけなのだが、車に近付いてきたシェリフのKeith Odle氏はAbadie氏がGoogle Glassをかけていたことを見つけ、さらに2枚目の反則切符を切ったのだという。カリフォルニア州の道路交通法の規則では、TVまたはそれに類似したスクリーン装置を見ながらの運転は禁じられている。2枚目の反則切符は、このVC 27602に違反したというのがその理由だ。Abadie氏はこの判断に対し無罪を主張し、今回の裁判となったわけだ。

裁判では証言として、Abadie氏がどのような過程で反則切符を切られたのかを主張し、一方のOdle氏はどういった理由で反則切符を切ったのかの説明を行った。Abadie氏は自身のGoogle+のページの中でも説明しているが、一方的に違反切符を切られたことを主張しつつ、「カリフォルニア州で運転中にGoogle Glassを装着することが違法なのか、あるいは警察側の判断が間違っているのか?」といった疑問を投げかけている。同氏はWeb関連の事業を行う企業家だが、四六時中Google Glassを装着してるという。Odle氏が2枚目の反則切符を切った理由として挙げるのは、視界の半分を被うGoogle Glassが見えたからだという。また、当初はAbadie氏の召喚までは考えていなかったものの、反則切符に関する判断で同氏がOdle氏に(Google Glass着用は違法かそうでないかという)論争を仕掛けてきたこともその一因だとしている。

裁判長のJohn Blair氏は同件に関して、VC 27602の要件である「実際に画面を見ていたか」という条件について、問題のGoogle Glassがそのタイミングでアクティブだったかどうかが確認できないという理由で、違反切符の無効を言い渡している。なおAbadie氏は前述のように四六時中デバイスを身につけており、Odle氏が車を停止させて接近してきたときもアクティブ状態で動いていたと述べている。同氏の弁護団は今回の判決を受けて「運転中のGoogle Glass着用は違反ではない」と主張している。また1枚目のスピード違反の切符についても、65mph (時速マイル)の制限区間で85mphの速度を出していたことが違反理由だとOdle氏は主張していたが、こちらについても機器の調整問題で実際に証拠が確認できないとして、違反切符取り消しを言い渡している。ほぼAbadie氏側の主張が認められた形だ。

Google GlassをはじめとするHUDは、もともと視界を遮らずに追加情報を表示することを目的として開発されたシステムであり、これが今回のようなケースで違反とされるのであれば、情報端末としてのGoogle Glassの根幹を揺るがすものとなる可能性がある。実際、カーナビゲーションやハンズフリーでの情報検索、電話応答など、車の運転中に役立つアプリやサービスが今後続々と登場してくるとみられるからだ。カリフォルニア州では運転中の携帯操作は違法となっており、利用する場合でもハンズフリー化が義務付けられている。一方で注意力散漫となる可能性のあるメールやSNS、動画情報の閲覧も可能であり、デバイスの特性上第三者からはその判別がつかない。VC 27602自体、Google Glassのようなデバイスが登場する以前の古い法律だが、新デバイスに関する法規制や利用判断は今後大きな議論となっていくことだろう。

(記事提供:AndroWire編集部)