Xilinxは12月10日(米国時間)、TSMCの20nmプロセスを採用した20nm All Programmable UltraScaleポートフォリオが利用可能になったことを発表した。

20nm世代品は、同社がこれまでのプロセスごとに機能を拡張してきたのとは異なる「UltraScaleアーキテクチャ」を採用して開発された。UltraScaleアーキテクチャとは何か? ということについては、すでに同社は2013年7月に同アーキテクチャに関する説明を行っているので、そちらを参照していただきたい

では、なぜXilinxがこれまでから大きくアーキテクチャを変更したかというと、プロセスの微細化により最先端プロセスを用いたASICの設計・製造コストが高騰し、そうしたデバイスを開発するよりもFPGAに肩代わりさせた方が安くて済む分野というのが拡大してきたことが大きい。同社もこれまで、長年にわたってFPGAがASICに代わり、システムの中心に位置するようになる、ということを語ってきたが、UltraScale製品でこの流れを加速させようということとなる。

もはやおなじみとも言えるザイリンクスのSam Rogan(サム・ローガン)社長

実際に、同社の売り上げはかつてはネットワーク基地局などの通信系がメインであったが、「そこの売り上げは依然として大きいが、それ以上にデータセンターやスマータービジョン、コンピュータビジョン、表示用ディスプレイ、M2M、エネルギー関連といったような分野でFPGAを適用しようという動きが広がっており、そこの売り上げが大きくなっている」(ザイリンクスの代表取締役社長であるSam Rogan氏)とのことで、さまざまな市場のさまざまなニーズに対応する必要が生じてきており、それらの各種ニーズに対応するためのパラダイムシフトを起こす必要があったと語る。

こうした市場ニーズに対応する同社のパラダイムシフトの最たる例が、プロセスの微細化を追求するのではなく、もちろん最先端プロセスをカバーしながらも、その市場にマッチしたプロセス世代品を今後も継続して提供していくという取り組み。これにより今後は28nmプロセス品(7シリーズ)、20nm(UltraScaleシリーズ)、そしてTSMCの16nmプロセスを用いる次世代UltraScaleシリーズが同時並行的に新製品が開発され、それぞれの市場領域の顧客に提供されていくこととなる。「色々な要求に応じていくという取り組みは、ASICと真っ向から戦っていくという意思の表明であり、用途に応じた機能性と消費電力を提供していくことを目指す」(同)とする。

これまではプロセスごとに世代を変えた製品を展開してきたが、今後は同一アーキテクチャをベースに用途に応じてプロセスを選択し、製品のラインアップ拡充が図られていくこととなる。そのため20nmプロセスのUltraScale製品と16nmプロセスのUltraScale製品の違いはプロセスによる性能差ではなく、トランシーバの数やDSPの数の違いなどで分けられていくこととなる

今回提供が開始されたUltraScale製品は「Kintex UltraScale(Kintex US)」と「Virtex UltraScale(Virtex US)」の2ラインアップが用意され、Kintex USは35万ロジックセルから116万ロジックセルまでの6製品、Virtex USは62万ロジックセルから440万ロジックセルまでの7製品が提供される。中でも440万ロジックセル品(5000万ASICゲート相当)「XCVU440」は、TSMCのCoWoSをベースとした第2世代SSIテクノロジを採用した3D ICで、第1世代品比でダイ間帯域幅が5倍に工場したほか、スライスの境界を越えてクロッキングアーキテクチャを統一したことで、モノリシックなダイと同様のデザイン体験を可能としている。また、32.75Gbpsのトランシーバ(GTY 33Gbpsトランシーバ)を活用することで、400G MuxSARや 400Gトランスポンダ、400G MAC to Interlakenブリッジといったアプリケーションを1チップでインプリメンテーションすることが可能となっている。

Kintex USとVirtex USのラインアップと、最上位品と前世代品との性能比較

Kintex USとVirtex USの違いは、基本的にはロジックセル数が少ないか多いかといったところだが、Kintex USがInterlakenや100G Ethernetのハードブロックがほとんどの製品で搭載されていないほか、GTY 33Gbpsトランシーバに未対応となっている代わりにDSPスライスがKintex USに比べて多いという点があり、用途に応じて使い分ける方向性が明確化された形となっている。

Kintex USとVirtex USの各製品の概要

デバイスの高性能化により、これまでのチューニングで対応といったことが難しくなり、よりうまく高性能化を実現できる設計メソドロジを構築する必要があった。それがUltraScaleアーキテクチャを実現する必要性であり、それに伴って、性能向上を図るための各種のボトルネックの解消も図られた

なお、すでにKintex US製品の出荷は開始されているが、Virtex US製品の出荷は2014年前半となる予定。また、ZynqシリーズもUltraScaleに対応する予定で、2014年にはなんらかのアナウンスを発表するつもりだとしているが、ローエンド向け製品シリーズであるArtixのUltraScaleアーキテクチャへの対応は市場の動きを見て必要性があれば対応していくが、おそらく28nmプロセスがメインとなるとしている。

Kintex USのDTH 16Gbpsトランシーバを用いたデモ。Tx側の波形がオシロスコープ上のもの。損失を疑似的に受けた後、Rxで受信した波形をKintex USでは自動的に補正してくれる(PC上の波形)。Kintex USの仕様上では16.3Gbpsとなっているが、今回のデモでは16.4Gbpsで実施。ブルーの部分がエラーフリー領域

また、UltraScale製品を用いた開発は、2013年12月18日に提供が開始される「Vivado 2013.4」より対応される予定となっている。