科学技術振興機構(JST)は12月3日、全国の中学生がチーム対抗で科学の知識・技能を競う「第1回 科学の甲子園ジュニア全国大会」の出場47チームのすべてが決定し、2013年12月21日、22日の2日間にわたって、東京・渋谷の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催することを決定した。

今回の大会に参加する47チームは、各都道府県の教育委員会が実施した代表選抜大会にて選出されたもので、各1チーム6名で構成され(中学1、2学年の生徒)、理科や数学などの複数分野にわたる筆記・実技競技による各自の得意分野を生かして協働で取り組み、総合点を競うというもの。

参加チームは各都道府県から1チームずつの47チーム

各都道府県の代表選考には、実行委員会が把握しているだけで1万5000名を超す生徒のエントリーがあったとのことで(参加校数は1234校で、国立が41校、公立が1107校、私立が86校となっている)、選考を通過した6名が1チームとなって全国大会に参加することとなる(選考会には、6名1チームでの参加のほか、都道府県によっては、3名1チームや1名1チームで、上位チームの混合チームとして全国大会へと出場させる、としたところもある。ちなみに、全国大会に参加する人数は47チーム281名。男子が210名で女子が71名という内訳となっている)。

科学の甲子園ジュニア 全国大会参加47チーム(複数の学校がある場合は、6人1チームでの選抜を行わず、上位2チームや上位6名などの混成チームとなっている)

同大会の目的は、「理科、数学などにおける複数分野の競技に協働して取り組むことを通じて、全国の中学生が科学の楽しさ、面白さを知り、科学と実生活・実社会との関連に気づき、科学を学ぶことの意義を実感できる場を提供することによって、科学好きのすそ野を広げるとともに、未知の分野に挑戦する探究心や創造性に優れた人材を育成することを目的とする」というもの。

科学の甲子園ジュニアの目指すところと特徴

競技の種類は、高校生対象の科学の甲子園と同様に「筆記競技」と「実技競技」を用意。筆記競技は1競技6題の問いを6人で70分以内に解くというもの。一方の実技競技は2競技開催され、それぞれ90分以内で最適解を導き出すものとなっている。

競技の構成と概要

実技競技の2つの問題のうち、1つは事前公開競技となっており、すでに参加チームに事前情報が渡されている。具体的には数学の問題で、和算の油分け算を行ってもらう「大江戸mathにて とりわけmass!?」というもので、江戸時代の和算家である吉田光由が執筆した「塵劫記」と1000mL、700mL、300mLの升を配布。これらを用いて、1000mLの升に入っている油を正確に半分ずつに分ける方法を考えるというもの。数学的には、3つの升に油を入れ替え、それを繰り返し、ということで何とかなるが、物理的に考えると、そこには表面張力が発生したりして、どの程度入れれば真に正確な量になるのか、といったことが問題になってくる。数学的な思考力と、正しく計量を行うための力、そして物体の特性について観察し、正確にそれを理解し、対策を施せるかどうか、という科学的なアプローチなどが求められる問題となっている。

実際に全国大会参加チームに配布された塵劫記と3つの升。参加各チームには、これらを活用したレポートの提出も義務付けられているという

なお、同大会の推進委員会は「出題の方向性は、科学は楽しいものだ、ということを前提に、一生懸命勉強するものではなく、手と頭を使って、自由な発想のもと挑戦してもらう問題を考えた」としており、単なる知識や演算能力だけで対処できる問題でないことを強調しており、「中学で習ったことだけでなく、その先にある考える力を活用し、課題を解決して行ってもらいたい」とコメントしている。

左からJST理数学習支援センター 副センター長の植木勉氏、開催会見に出席し、抱負を語ってくれた茨城県チーム代表、茨城県立並木中等教育学校の大塚みちるさん(2年)、高野紗彩さん(2年)、同じく千葉県チーム代表、千葉県立千葉中学校の池田知徳くん(2年)、岡田正大くん(2年)、科学の甲子園ジュニア推進委員会 委員長の永澤明氏。中央の人形は科学の甲子園イメージキャラクターのアッピン