生理学研究所(NIPS)と中央大学は、赤ちゃんがヒトの白目と黒目のコントラストを手掛かりに顔を認識する能力は、生後5~6カ月ころに発達すること、ならびに白目と黒目というヒト特有の顔は、乳児の脳の右半球で処理されている可能性があることを発表した。

同成果は、中央大学研究開発機構の山口真美教授、市川寛子機構助教、生理学研究所の柿木隆介教授らによるもの。詳細は、欧州の認知神経科学の専門誌「Neuropsychologia」に掲載された。

「ブレア錯視(Blair illusion)」の例。目のコントラストを反転させると人物同定が困難になる

「ブレア錯視(Tony Blair illusion)」は、良く知られたヒトの顔であっても、白目と黒目の明暗関係を反転させた目にすると誰の顔かわかりにくくなったり、奇妙な印象を与えたりするといったもので、同研究の発表者であるAnstis氏は、「子供を怖がらせるバンパイアのよう」と形容している。

今回の研究は、この奇妙さを感じるのはいつごろかを探る目的で実施されたもので、生後5~6カ月の乳児に、白目と黒目のコントラストを保った正常の目と、白と黒を反転させた目をもつ顔のそれぞれのときにおける脳活動の計測を近赤外分光法(NIRS)を用いて行った。

その結果、正常な目の顔を見ているときは脳活動が上昇したが、白黒反転目では脳活動が上昇しないことが確認されたほか、正常な目を見ているとき、脳の右後側頭部が強く活動していることが確認されたという。

研究グループはこれらの結果について、生後5カ月以降になると乳児はヒト特有の白目・黒目をもつ顔だけを「顔」として認識し、その処理を脳の右半球で行っていることを示唆するものだと説明。今回の成果が、赤ちゃんの脳内でヒト特有の目に反応する神経基盤の解明につながるものとなることが期待できるとしている。

正常の目と白黒反転をさせた目を見た時の脳の反応